日経ビジネス20100802

■金融市場
2005年末からの4年半の間に、中国・上海市場では上場する国内株式の時価総額は2861億ドルから2兆506億ドルへと7倍以上に急成長した
同じ期間、東京市場に上場する国内株式の時価総額は4兆5729億ドルから3兆2773億ドルへと3割近くも減少した
日本に上場する企業の株価が上昇しなかったことに加え、新規に上場する企業が激減したことが大きな要因だ
要は成長が著しい中国の市場には膨大な資金が流入したのに、日本には資金が流入せず、むしろ流出していったことが背景にある

そうは言っても株式市場はまだいいほうだ
悲惨なのは工業原料や資源、農産物を取引するコモディティ市場だ
もはや瀕死の状態と言っていい
「世界の商品取引の出来高は2003年の6億3422万枚から2009年には23億1178万枚へと4倍になった。ところが、日本の商品取引所の出来高は1億5409万枚から3555万枚と4分の1になった」とドットコモディティの車田直昭会長は言う

「このままでは東京工業品取引所も、東京穀物商品取引所も時間の問題。数年内には息が止まる」と経産省の官僚たちは危機感を強めていた

日本のマーケットの規制は省庁縦割り
株式や金利、為替などの監督官庁は金融庁で金融商品取引法ができる前は規制法もバラバラだった
一方で商品取引規制には商品取引所法が別途存在し、監督官庁は工業品は経産省、農産物は農水省が所管している
しかも、それぞれの取引所には監督官庁の大物官僚OBが天下っている
東工取の江崎格社長は資源エネルギー庁長官や産業政策局長を務めた経産省OB
東穀取の渡辺好明社長は農水省OBで水産庁長官や農水事務次官を務めた大物だ
東証には自主規制法人の理事長として林正和・元財務次官が天下っている
規制を握ることで天下りポストを確保する
霞ヶ関の旧習が生きているのが取引所というわけだ

大臣政務官の近藤洋介・民主党衆院議員は、この規制を金融庁に一本化し、経産省と農水省の監督権は放棄すべきだと主張した
これに真っ向から反対したのが経産省の幹部官僚だ
権限が増えるはずの金融庁も難色を示した
「いまさらお荷物を預けられても」という声もあったが、実際には「他省庁の権益に手を付けるわけにはいかない」という霞ヶ関の不文律に縛られていたのだ

霞ヶ関の総反対を押し切ったのは、民主党の掲げる「政治主導」だった
政府がまとめた「新成長戦略」の中に「金融」を盛り込んだ上で、総合取引所構想を21の国家戦略プロジェクトの1つに押し込んだ

新成長戦略は6/18に閣議決定された
国の正式な戦略として承認されたわけだが、霞ヶ関の抵抗が続く中で、どこまで実現できるかはわからない