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 やはり商売は直感がいちばん大事だと私は思います。データに頼れば頼るほど、想像力の阻害要因になりますし、新しい時代を読むことはできるかもしれませんが、時代を創るためのクリエーティブネスを損なうかもしれないと思っています。
 そこで私は社員に「いろいろなリサーチをする前にお店に行け」「お店に行ったら商売のにおいがする」「商売のにおいがしないやつは、もうそこで失格だ」と、こういう言い方もしています。
 たとえば新商品を出したとします。コンビニでも常識ですが、最初の2週間で1人のお客様が再購買されると、これがヒット商品の大事な見極めポイントとなります。
 それをリサーチでお客様にリピートパーチェスのテストをやります。「再購買の意思がございますか?」と聞くと、日本人は意思がなくても「はい」と答えます。そのようなデータではなく、お店に行ってお客様が食べていらっしゃるときの目を見ます。目を見た瞬間、本当のことがわかるのです。これが商売のにおいをかぐという典型的な事例です。
 そして、お店に行ってお客様やクルーと話をすること。クルーは嘘をつく必要がありませんので、彼らと話すと真実がわかります。そしてお客様の行動がすべての検証です。

 自分が信じるものを作り、それを実行することが経営戦略です。その実行を客観的に検証し再確認するためのツールがデータです。
 よって戦略企画はリサーチデータで生むものではないと私は強く思っています。リサーチデータで戦略が立案でき成功するのであれば、世の中、倒産する企業はないでしょう。リサーチデータという結果から将来を検証する、予見することはできますが、戦略の成功を担保するものではないと思います。

 繰り返しになりますが、「基本」「らしさ」を徹底して考えることが重要です。たとえば、私どもの商品にコーヒーやホットドッグがあります。これはビッグマックやマフィン、マックグリドルのように、わが社でしか作れないものではなくコモディティです。
 「らしさ」と言いながら、なぜコーヒーやホットドッグを売っているのか。それは、わが社しかできない商品、ビッグマックをもっと売るためです。
 コモディティで新規顧客をお招きし、ビッグマックの売り上げにつなげること。すなわち冒頭に申し上げた基幹ビジネスを成長させるための新しい施策です。
 簡単に申し上げると、コーヒーが売れればビッグマックが売れる。ホットドッグを出せばビッグマックが売れる。これが、結果の検証の1つのチェックポイントです。
 そういう意味で、「らしさ」だけ追求すればいいわけではなく、「らしさ」を持った商品をもっと売るためにコモディティの戦略的なポジショニングも必要だということです。
 乱暴な表現になってしまいますが、ビジネスの非常識を常識にすること。ニトリさんの商品やユニクロさんの商品を見ても、非常識だった世界を常識の世界にしてきた結果だと思います。つまり、新しい世界、新しい常識を創ることが、新しいビジネスのリーダーシップにおける基本的な振る舞い方なのではないでしょうか。
 社員は、できない理由をよく言ってきます。できない理由があればあるほど、それを実現することが、他社の追随を許さない強い競争力を生むことになるのです。
 また、ビジネスはスピードです。13カ月でやることを12カ月でやれば、売り上げは12分の13倍になります。それぐらい簡単なことです。したがって「決定したらすぐやれ」とよく言われますが、「決定しなくていいからやれ」というぐらいの感覚で動かなければいけません。
 ここで重要なことは、決定する人と実行する人をきちんと分けることです。2人で決定することを4人で決定させると、対角線での議論になるので2倍ではなく4倍の時間がかかります。少ないメンバーで質の高い決定をし、多くのメンバーで実行することが、組織の基本的な考え方であろうと思います。