20110919日経ビジネス

■TOC(制約理論)
TOCの基本は、工場における製品の生産など一連の流れの中で、ボトルネック(制約)になっている部分を見つけ出し、そこに集中して全体最適を目指す点にある
例えば、ある一つの製品を生産するプロセスに複数の工程があったとしよう
各工程で改善活動を行って生産性の向上が見られても、ボトルネックが残っていれば、そこが足を引っ張って全体の生産性は高まらず、製品の生産性も増えない
改善活動が部分最適にとどまり、全体最適に至っていないからだ
TOCではやみくもに改善活動を行わず、ボトルネックの部分だけに集中して生産性を高める
そうすれば、全工程で改善を行うよりもはるかに少ない労力で、確実に全体の生産性を高め、製品の生産量を増やせる
すなわち、ボトルネックに集中することによって部分最適に陥ることなく、全体最適を実現できるというわけだ

オムロン大連で主に取り組んでいるのは、「ダイナミック•バッファー•マネジメント(DBM)」と呼ばれる在庫管理手法による改革である
DBMでは、製品の需要を予測する行為をボトルネックととらえ、在庫管理の全体最適を図る
まず製品の不確実な需要変動に対応するためのバッファーとして、品目ごとに許容し得る在庫量を定める
この許容在庫量を3等分し、上から緑、黄色、赤のゾーンに色分けする
そして製品を補充する時点で、実際の在庫量がどのゾーンにあるのかをチェックする
実際の在庫量が緑のゾーンにとどまっておらず、在庫に余裕があることを意味する
在庫が余っているのだから、補充する必要はあまりない
補充在庫を減らすために許容在庫量を引き下げる
実際の在庫量が中央の黄色のゾーンの中で推移していれば、製品の需要と供給のバランスが取れている
一方、実際の在庫量が赤のゾーンに入ってくると、製品の売れ行きが良く、在庫が逼迫していることになる
赤のゾーンに一定期間とどまるなら許容在庫量を引き上げて、補充量を増やす
こうした作業をダイナミックに繰り返すことで、商品の需要変動に許容在庫量、ひいては実際の在庫量が連動するようになる
その結果、過剰在庫や欠品を防げるようになる

オムロン大連では90年代にトヨタ生産方式を導入し、生産計画に応じて必要なものを必要なだけ生産することに取り組み、在庫削減に努めてきた
しかし、一時的に在庫は減っても、いつの間にか在庫が増えてしまう
一方で欠品もなくならない
原因がわからなかったが、DBMの学習を通して解明された
従来は世界各地における精緻に積み上げ、その結果に基づいて月ごとに生産台数が平準化する形生産計画を作成していた
そうすれば、必要なものを必要なときに必要なだけ生産することにつながるという前提にたっていた
しかし、この前提が誤っていたことに気づいたのである
問題は予測した需要が往々にして外れるということだ
その原因は、需要を予測してから生産計画に沿って製品を生産し販売するまでのタイムラグにある
販売する時点での実需が予測を下回れば在庫が増え、逆であれば欠品が生じるというわけだ
実際DBMを導入する前には、そのタイムラグは13週間以上もあった
需要の予測が外れるなら、予測すること自体をやめて、製品が売れた分だけを素早く補充するやり方に改めればいい
そうすれば、過剰在庫も欠品も防げる
このような在庫管理を実現する手段としてDBMを導入した
もっともDBMによる在庫管理を効率的に実施するには、製品の供給リードタイムを大幅に短縮することが必要とされる
ただし、供給リードタイムが13週間以上もかかったことには、それなりの理由があった部品の中に発注してから納品されるまでに12週間以上かかるものが含まれていたからである
すなわち、納期の長い部品が、製品の供給リードタイムを短縮するうえでのボトルネックになっていたわけだ
納期の長い部品を供給している部品メーカーに対して、当社が引き取ることを確約して、部品の完成品の在庫と材料を抱えてもらったのである