20111031日経ビジネス

■澤田秀雄 HIS会長について 南部靖之 パソナグループ代表
「創業者」はカネを使って新しいことに挑戦し、「経営者」は緻密な計算によって利益を生み出す
本来違う性格だと思っていたが、澤田君はこの2つを併せ持っている

■ トニー・フェルナンデス マレーシア・エアアジアCEOについて 伊東信一郎全日本空輸社長
トニーの持つ人生訓は、「夢を見ること。かなえること。信じられないことを信じること。夢を見ることに挑戦し、NOとは絶対に答えないこと」彼の人柄、ビジネスはまさにこの言葉通り

■スティーブ・ジョブズ アップル創業者について 孫正義
アップル復帰後に彼が手がけた有名なテレビコマーシャルを思い出す
「Think different」
歴史に名を刻む人物は、その他の人間とは全く違う生命体なのかもしれない
想像を超える発想を生み出す
そして絶えず世の中に問うことになる
だから、crazyと批判されることもある
それでも自分を信じる
そうして生まれたモノだけが、世界を変える力を持つのだ
ジョブズの生き方が、それを証明してくれた
彼がこの世に残したモノは、優れた製品だけではない
彼の生き方、そして考え方から、一体我々は何を引き継いでいくべきなのか

■大震災後の日本経済 野口悠紀雄
「大震災によって、日本経済を束縛する条件は、需要不足から供給不足へと180度変わった」というのが、本書の出発点となる認識である
震災で生産設備が損壊し、でんり供給能力も大幅に低下するため、生産を拡大することができなくなる一方、復興のために巨額の投資が必要になるからだ
こうした超過需要の経済環境で、復興財源として大量の国債を発行すれば、金利が上昇し、激しいインフレーションを起こすという
これまでは、「企業の資金需要が低水準のままであった」ため、長期金利が高騰することはなかった
しかし復興が本格化すると、資金需要に応えるために、金融機関は国債売却を加速して金利が上昇する
そこで国債暴落を回避するために、日銀が大量に国債を購入することでハイパーインフレが生じてしまう
だとすれば、消費は抑制されるが、法人税、所得税、電力税などの増税のほうが痛みは少ないというのが著者の見立てである

■経済復興 岩田喜久男
著者は取るべき経済の範を、昭和恐慌の高橋是清財相に見る
具体的には、復興が軌道に乗るまで、4%のインフレ目標を設定して、マネタリーベースを大きく増やし、「市場に穏やかなインフレ期待を抱かせる」
これに成功すれば、経済成長による税収増や円安による輸出増大につながる
このデフレと円高からの脱却は、震災以前から著者が一貫して唱え続けている提言である

■熊谷亮丸 大和総研チーフエコノミスト
足元はギリシャに端を発した債務危機で、世界にはデフレ懸念が強くなっています
しかし、過去100年の間に世界に起きた金融危機とそのあとの経済情勢を見ると、そんな不安とは異なる姿が浮かび上がります
金融セクターの危機の後には、景気の落ち込みを防ごうとした大規模な財政出動があり、それが財政危機を招くのが常なのです
そしてその次には利下げなど金融緩和が加速し、それがインフレ圧力を高進させるという段階を経ていくのです

株式のような金融商品と実物資産は10〜20年ごとにどちらかが強くなる時代を繰り返しているのです
私は2000年以降、世界経済は実物資産の時代に入ったと見ています
なぜか。グローバル化は新興国経済を急拡大させ、豊かさの増進が穀物や資源の消費量を急増させています

例えば原油価格上昇は加工貿易の国である日本の経済に大きな影響を与えます
一方で、日本は高齢化でやがて貯蓄を取り崩す時代がきます
国の財政は大幅赤字であり、併せて考えると2015〜2020年にも経常収支が赤字に転じる可能性があると見ています
そのときに起きるのは円安であり、株安、債券安、インフレなよではないでしょうか

■ノリエル・ルービニ氏
先進国の企業は最終需要の低迷で生産能力が過剰となり今後の需要も不透明なことから人員削減を進めている
しかし人員削減は最終需要をさらに冷やす
ある企業の労働コストはほかのだれかの労働所得と需要であり、一企業にとって個別には合理的なことも、総体としては有害なのだ
結果として、自由市場は十分な最終需要を生まない
例えばアメリカでは、労働コストの削減は国内総生産に占める労働所得のシェアを急速に縮小させた
カール・マルクスは、社会主義を褒めそやしすぎたが、グローバリゼーション、解放された資本主義、そして労働者から資本家への所得と富の再分配が資本主義を破滅に導くと主張した点は正しかった
彼が述べたように、規制されない資本主義は、信用のバブルと資産価格の騰落に煽られ、常に過剰生産と消費不振を起こし、破滅的な金融危機を繰り返しかねないのだ
大恐慌以前でさえ、欧州の啓蒙的なブルジョア階級は、革命を避けるには労働者の権利の保護、賃金と労働条件の改善、富を再配分し教育、保健、社会的セーフティネットなどの公共財に資金を回す福祉国家の創造が必要だと認識していた

金融システムは慎重に規制する必要があるとの教訓は、欧州の社会福祉モデルの欠陥などにより大規模な規制緩和を求める世論が高まったレーガン米大統領・サッチャー英首相の時代に失われた
その欠陥とは、増大する財政赤字、過剰な規制、そして経済的ななダイナミズムの欠如として表れていたもので、経済成長は停滞し、今日のユーロ圏の政府債務危機に至っている
しかし、アングロサクソンの自由放任モデルとて、今や悲惨なまでに失敗している
市場志向型の経済を安定させるには、市場と公共財の供給の適切な均衡を取り戻すことが必要だ
それは規制されない市場というアングロサクソンモデルからも、財政赤字に依存した大陸欧州の福祉国家モデルからも離脱することを意味する
アジアの成長モデル(そういうものが実際あるならば)でさえ、中国やインドなどでの不平等の拡大を止められなかった
不平等の問題にきちんと対処できない経済モデルは、その正当性がいつかは危機に瀕する