20111107 日経ビジネス

■日本曹達
農薬大手の日本曹達は世界の80カ国以上で販売する殺菌剤「トップジンM」の原体の生産を韓国で始める
進出先は韓国南部にある麗水市
同国三大コンビナートの一つがある
外国企業への投資減税制度で法人税は5年間無税で、さらに2年間は半額で済む
地方税や市税も15年間はタダ
貿易自由化、為替、法人税、温暖化ガス規制、労働規制、電力問題
自動車や電機などでライバルとなった韓国メーカーに対して、国内メーカーは「六重苦」と呼ばれる、ハンディを背負っての戦いを強いられている

逆に言えば、韓国ではこれらの条件がクリアされている


■大坪文雄 パナソニック社長
テレビ事業が収益的に非常に厳しいことは事実です
私たちは計5工場への大型投資決断しました
投資を決めた当時はパネルからテレビを一貫する選択肢は理にかなっていました
ただ為替相場はそのころ1ドル115円前後でした
円高を想定できなかったのは反省すべき点です
また薄型テレビがコモディティ化するスピードの速さを痛感しました
それでもこれだけ大きな生産能力を持っているのですから、円高や価格下落がいくら激しくても、大量生産や地道なコスト削減を続ければ、再生の道は開けると思ってきました
しかし、それは難しいと判断しました
経済実態から乖離した水準まで円高が進んでいますし、ウォン安の進行で韓国メーカーとの優劣の差はどんどん開きました

問:
テレビ事業をどのように黒字化させますか
答:
設備投資が重すぎました
これからはアセットライト(資産の軽量化)戦略に転換します
生産量の拡大による収益の追求はもう辞めます
国内工場はプラズマの尼崎第2、液晶の姫路に絞り込みました
今ある設備の範囲内で最適な数量を作り、着実に収益を確保する方向に舵を切ります
プラズマテレビに力点を置いて薄型テレビ事業に取り組んだことも反省点です
プラズマは技術的に大型テレビに向いています
ですから、家庭のテレビが大型化することを想定して、プラズマテレビで大画面のニーズに応えようとしました
この判断は当初正しかった
ところがその後、各社が液晶パネルに積極投資して液晶テレビでもプラズマテレビに劣らない大型製品を作れるようになりました
当社も大型テレビで液晶を採用した商品を今後はどんどん開発することにしました
製品デザインも劣っていました

急激な円高に限らず、日本の高い法人税率や電気料金、関税障壁などあらゆることが当社の経営の重しになっています
TPPへの参加などを通じて、一つ一つをはやく解決していくほかありません

我々が掲げる「まるごと」はこれまで他社が取り組んでこなかった全く新しいビジネスモデルへの挑戦だと考えています
そう簡単にビジネスは拡大しないでしょう
パナ電工の長榮周作社長らの発案である100本の矢作戦に取り組み、地道に売り上げ拡大を目指します
まるごとに関わるプロジェクトやテーマ一つを一本の矢に例えて
それを世界中で100本揃えようとしています
例えばコンビニストアチェーンに省エネ製品などを一括提供する「コンビニまるごと」
すべての矢が的に命中するわけではないので、100本以上の矢が必要になります
作戦は100本の矢が突き刺さるまで続けます
一本の事業規模が100億円として100本命中すれば一兆円の売り上げになります