20120116日経ビジネス

■ジムロジャーズ
ユーロはあと10年続かないだろうが、2〜3年は持ちこたえると思っていた
だが、事態は私が思う以上に深刻だった

ドイツのメルケル首相はタフで、問題解決にむけて強い意志を示している
これ以上、財政赤字を拡大させないために、資本規制や制裁措置の枠組み作りに意欲的に取り組んでいる
彼女は正しいことをしようとしている
しかし制裁の対象となる国や金融機関が曲者だ
彼らは損を被りたくないので、なかなか膿を出そうとはしない
だからいつも問題を先送りする
これでは支援する側のドイツ国民は納得しないだろう

ギリシャは紀元前2000ねんの頃から借金を繰り返している
徳政令の乱発や債務奴隷など、歴史を通して負債にまつわる問題を抱えてきた
このギリシャ人の体質はそう簡単には変わらないよ

ある時点でデフォルトしてしまったら、次は誰がお金を貸すだろうか
デフォルトし、信用を失った国の国民はこれ以上お金を借りることができずに、収入の範囲内で生活することを恐ろしいじゃないのだろうか

ユーロを破綻させることも含め、
根本的に何かを変えなければならないところまできている
ユーロの2012年は一言で表すならば「muddle(ごたごた)」だ

今はむしろドルのほうがポジティブだ
昨年ユーロを売った時、少しドルを買った
以前に比べて楽観的に見ている

私がドルを買っているのは、世界の資金がドルに向かっているからだ
しかし決してドルが安全だとは思っていない

「質への逃避」ではなく、「流動性への逃避」だ
危なくなったらすぐ換金できる場所にお金をおいている

これまでの歴史を振り返ると、アメリカは4〜6年サイクルで不況に見舞われている
2001年の同時多発テロ以降に始まった不況は、2008年のリーマンショックでさらに深刻化した
次のサイクルはちょうど2012、2013年あたりか
もっと事態は悪くなるだろう

私は世界の株式への投資を長年控えてきた
でも、日本株だけは買っている
理由は割安だからだ
震災直後に日本株インデックスと農業関連株を買った
私は世界の農業関連ビジネスに興味を持っているから
経済構造が変化しつつある点も評価できる
1970年代、日本は貿易総額のうち約30%がアメリカ向けで25%がアジア向けだった
それが足元では50%以上がアジア向けになり、アメリカは15%となっている
この傾向はいいことだ