◼︎20140331 日経ビジネス

◼︎日覺昭廣 東レ
我々の場合は得意分野や経営資源をいかせるかどうかというところに主眼を置いています
欧米企業のように、短期的収益の拡大のためにシナジーがなくても高収益事業を買収するという考えはありません
繊維や炭素繊維、樹脂などの分野で持ち前の技術力やコスト競争力を生かせるかどうか
そういった判断で戦略を考えています

日本は明治維新以降、欧米の優れた技術を積極的に取り入れて発展してきたため、欧米のほうが正しいという先入観があるのではないでしょうか
日本のグローバル化は、海外のものを吸収することから始まったのです
ところが、欧米などのグローバル化は自分のモノサシを海外に押し付けることです
そろそろ日本の良さを前面に打ち出していく時代になってもいい
株主だけでなく、顧客・取引先、地域社会、従業員といった関係者全般の貢献を重視し、持続的に成長していく点は日本経営の良さです

◼︎コリン・アン アイロボットCEO
もちろんコストは考慮に入れますが、我々の製品は最も高価で最新の技術を搭載しているため、販売価格は一番高い水準で勝負します
高いコストをかけ、競合他社から攻撃されるような革新的製品を生み出すのが、アイロボットのビジネスモデルです

1年以内に製品化する「現在の開発」
1〜2年後の実用化を目指す「中期的な開発」、2年を超える「長期的な開発」に分類されます
人材や資金といった経営資源は40〜50%を現在の開発、残りの20〜30%を長期的な開発に配分しています
このうち、私が最も大事だと考えているのは、実は中期的な開発です
多くの企業でありがちなのは、目先の製品とロングタームの最新技術にばかり労力を注ぐケースです
2年くらいの中間的な開発に人やお金を割くのを忘れてしまうのです

企業は、単に最高の技術を持っているだけでは十分ではありません
技術を製品に結びつけるのに要求されるスキルは、全く性質が違うのです
信念を必要とするのです
「中期的な開発」に成功している企業でそれを可能にしている要因がなにかと言うと、それはCEOです
失敗するかもしれない開発に対し、CEOが自らリスクを取って資金を投じているのです
経営資源の20〜30%を2年後を見据えた中期的開発に投じるのは、「賭け」にも似た非常に難しい判断です

アイロボットの最も重要なバリューは、ハードウエアとソフトウエアの両方に通じた専門家がおり、それらをコスト効率の高い方法で組み合わせる力にあります

◼︎古森重隆 富士フィルムホールディングス会長・CEO
CEOとして100の決断をしたらそのすべてを間違えないという覚悟で日々の決断を下してきた
だが、決断の過程ではデッドラインのギリギリまで考え抜いても結論が出ないこともしばしばあった
腹を決め、可能な限りの情報を集め、最後の最後まで考え抜く
それでも、はっきりとした優位性が見えない時が現実にあった
そのような時、リーダーはどうすればいいのだろうか
私は「いずれを選択しても正しいのかもしれない」と考えることにしている
経営者が完全な情報で判断できる機会はまずない
それを恐れて、意思決定を先送りするくらいであれば、どちらを選んでも成功の確率に大差ないと腹を決めて、いずれかの方向に足を踏み出す方がいい
もちろん、そのあとは選んだ道を全力で成功に結びつけなければならない
リーダーの力量は決めた方向に社員を導き、実際に成功させること
決めたことに全身全霊を傾けていく
成功しない決断に意味はない
「やる」ときめたら徹頭徹尾、スピーディーかつダイナミックにやらなければならない