◼︎20140317 日経ビジネス

◼︎張瑞敏 ハイアール集団CEO
コストの違いは、勝ち残るための決定的な差ではなくなると思っています
仮にコストが低くても、中国で生産したものが世界中で売れるかと言えば、そうではない
グローバル化の流れの次にあるものは、ローカル化にほかなりません
地域のマーケットニーズを満たすことが最重要課題です
日本にR&D拠点を持つのも、様々な顧客の悩みやニーズに応えられる体制を作るためです
ある場所で生産したものが、世界中で競争力を持つ時代ではないのです
だとすれば、コストばかり気にして製造拠点をあちこち移転しても仕方ありません
むしろ現地での顧客満足度を最大化することを軸に、対応を考えなければならないのです

昨年、米GE前CEOのジャック•ウェルチ氏と話したのですが、「(自ら選んだ後継者について)交代当初はベストだったが、時代が変わった今は分からない」と言っていました

事業継承の本質とは、「最も優秀な人材を指名すること」でもなければ、「いつトップのいすを譲るか」という問題でもありません
内部の自発的な力によって、その時に最適なトップを選ぶメカニズムがあるかどうかです
仮に私がこのままずっとハイアールにいるとしても、私がトップにいるもは限らない
そうした仕組みが出来上がることが重要なのです

企業として一番難しいのは、成功している現在の仕組みを壊して再建することにあります
過去の輝かしい歴史や業績を振り返っていては、かえって未来に向かう前向きのエネルギーが働きにくくなる
それを感じたのは大阪にあるパナソニックの展示館を訪れた時でした
私はそこで、自社で展示館を造るなら過去を語るものではなくて、これからの未来を考えるものにしたいと思いました

企業の経営手法には寿命があり、いずれ死は避けられないと思います
遅いか早いかだけのことなんです
だとすれば敵に打ち滅ぼされるより前に、活力があるうちに自ら死を選び、その後の新たな再生へ向かうことを繰り返すしか競争力を保つ手段はありません
人間は誰も、波瀾万丈を自らは望みません
ですが、外部の環境変化は襲いかかります
対抗するには、過去に構築された仕組みを捨て、一から作り直さなければなりません
それを出来るかが、激変する世界で生き残れるかどうかを決めると思います