■20150907 日経ビジネス

■古森重隆 富士フィルムホールディングス会長・CEO
私は営業畑が長いのだが、その経験の中で実感したことがある
営業の成果を上げられる人というのは、人間性や知力、体力などのバランスがよく取れている
その後、それは優れた研究者や技術者、そして何より経営者も同じということに気づいた

人を受け入れ、人に受け入れられるかどうか
公のために尽くすことができるかどうか
そうしたハートがなければ、周囲を巻き込んで大きな仕事をすることはできない

昔から好きな言葉に知識、見識、胆識というものがある
知識はただ知っているだけ
そこに自分の価値観を込めて血肉としたものが見識だ
「これは正しい」「すべきことだ」
そこまで踏み込むことで知識は見識になる
さらに「正しい」と信じて下した決断を、結果に対して責任を負いつつ、行動に移せるかどうか
そこで問われる胆力を伴う見識を胆識と呼ぶ
危険や痛みを伴った、しかし必要な決断を貫き、実行できるかどうか
リーダーにはその胆力が問われる


五感で知り、頭で考え、ハートと胆力を持って臨む
あとは、そうして練られた戦略や戦術を人にどう伝え。どう実行していくか、だ
足腰も不可欠だ
言葉だけでない、他人任せにしない行動力と実行力
そして、現場まで足を運んで頑張る力、現場をその目で見ようという姿勢
これらがなければ戦略が現実から遊離する
技術、スキルも必要だろう
いわば、「手」と「腕」の力
ただその巧みさだけでなく、時には、強引にでも自分の考えに従わせ、戦術を遂行させる「腕力」も必要になる
自分の考えを正しく伝え、理解してもらうためのコミュニケーションの力も欠かせない
そして「顔」や「姿勢」
その人の生き様や信念が表れた、自信のある顔つきをしているか

経営という営為は、頭だけで考えて結論を出せるゲームではない
自分が持ち得るあらゆる力、五体に宿るすべてほ力を総動員して、自分そのものを賭して挑むものだ