日経ビジネス20101004
■
なぜ偉大な企業が衰退するのか。
その法則を導こうと試みたのが、このほど発売された「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の5段階」
コリンズ氏は多くの企業が左図のように5つの段階を経て衰退すると考えた
1.成功から生まれる傲慢
2.規律なき拡大路線
3.リスクと問題の否認
4.一発逆転策の追求
5.屈服と凡庸な企業への転落か消滅
ソニーの歴史を振り返るとこの5段階をたどっているようにみえる
ソニーが偉大な企業になれた最大の理由は、世の中にない製品を出し続けたからだ
79年に発売した「ウォークマン」は音楽の楽しみ方を根本から変え、89年に発売したパスポートサイズの「ハンディカム」は小型化で先頭を走った
自信からか80年代後半、異業種への触手を伸ばした
象徴的だったのが、89年の米コロンビア・ピクチャーズ・エンターテイメントの買収だ
これこそ、コリンズ氏が衰退の第二段階とする「規律なき拡大路線」だろう
実際に、映画部門は毎年莫大な赤字をもたらし、ソニーの財務を傷めていった
こうした状況下で95年に登場したのが、その後10年間ソニーのトップに君臨した出井伸之氏だった
出井氏は映画事業に大ナタを振るうことで止血に成功
「PS」や「バイオ」などヒット商品を生んだ
「デジタル・ドリーム・キッズ」などのスローガンを掲げ、デジタルへの移行を声高に叫んだ
それでも、組織が持つ成功体験があまりにも大きすぎ社内にはアナログに携わる人員が多く、経営者1人では変えられなかった
「出井さんはビジョンを掲げてはいたが実行がともなわなかった」あるソニー幹部OBは悔しそうに語る
典型例がテレビだ
97年に発売した平面ブラウン管テレビ「ベガ」が大ヒットしその後数年間ソニーはこの市場で圧勝する
反面薄型テレビへの移行では、シャープやパナソニックの後塵を拝することになる
矛盾は、2003年4月一気に噴出した
大幅な業績下方修正を突然発表したことで、株式相場が大暴落する引き金を引いた「ソニーショック」だ
この時の記者会見で出井氏は大きなミスを犯してしまう
前の期の売上高営業利益率は2.9%だったにもかかわらず、2007年3月期に10%するという公約を掲げてしまったのだ
これは、衰退の第三段階である「リスクと問題の否認」にソニーが陥ったことを意味する
「市場では10%という数字が既成事実化し、出井氏の認識の甘さを問う声が大きくなっていった」と日興コーディアル証券の三浦和晴アナリストは振り返る
しかも出井氏は、「面白い製品を生み出すことではなく、リストラで10%を実現しようとした」(幹部OB)
コスト削減が優先されるあまり、最先端の技術を追求するよりも、消費者に迎合する製品が増え始めた
似たような製品がソニー内の別事業部から乱立する一方で、「新製品を作っても、出井さんは評価してくれないだろう」(エンジニア出身OB)という雰囲気が蔓延
社内で斬新な製品に挑む社員が減っていったとされる
そして、2005年6月、ハワード・ストリンガー氏に「一発逆転」を託す格好で出井氏は退陣することになる
ストリンガー氏はリストラに取り組む一方で、韓国サムスンと液晶パネルの合弁会社を設立
今年に入り米Googleと提携するなど競争力強化に手を売っているが、「業界のトレンドを作るのではなく、追いかける側に回っている」とシティグループ証券の江沢厚太氏アナリストは指摘する
ソニーはコリンズ氏が説く衰退の第四段階「一発逆転の追求」から抜けだせず、かつての輝きを取り戻せていない
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なぜ偉大な企業が衰退するのか。
その法則を導こうと試みたのが、このほど発売された「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の5段階」
コリンズ氏は多くの企業が左図のように5つの段階を経て衰退すると考えた
1.成功から生まれる傲慢
2.規律なき拡大路線
3.リスクと問題の否認
4.一発逆転策の追求
5.屈服と凡庸な企業への転落か消滅
ソニーの歴史を振り返るとこの5段階をたどっているようにみえる
ソニーが偉大な企業になれた最大の理由は、世の中にない製品を出し続けたからだ
79年に発売した「ウォークマン」は音楽の楽しみ方を根本から変え、89年に発売したパスポートサイズの「ハンディカム」は小型化で先頭を走った
自信からか80年代後半、異業種への触手を伸ばした
象徴的だったのが、89年の米コロンビア・ピクチャーズ・エンターテイメントの買収だ
これこそ、コリンズ氏が衰退の第二段階とする「規律なき拡大路線」だろう
実際に、映画部門は毎年莫大な赤字をもたらし、ソニーの財務を傷めていった
こうした状況下で95年に登場したのが、その後10年間ソニーのトップに君臨した出井伸之氏だった
出井氏は映画事業に大ナタを振るうことで止血に成功
「PS」や「バイオ」などヒット商品を生んだ
「デジタル・ドリーム・キッズ」などのスローガンを掲げ、デジタルへの移行を声高に叫んだ
それでも、組織が持つ成功体験があまりにも大きすぎ社内にはアナログに携わる人員が多く、経営者1人では変えられなかった
「出井さんはビジョンを掲げてはいたが実行がともなわなかった」あるソニー幹部OBは悔しそうに語る
典型例がテレビだ
97年に発売した平面ブラウン管テレビ「ベガ」が大ヒットしその後数年間ソニーはこの市場で圧勝する
反面薄型テレビへの移行では、シャープやパナソニックの後塵を拝することになる
矛盾は、2003年4月一気に噴出した
大幅な業績下方修正を突然発表したことで、株式相場が大暴落する引き金を引いた「ソニーショック」だ
この時の記者会見で出井氏は大きなミスを犯してしまう
前の期の売上高営業利益率は2.9%だったにもかかわらず、2007年3月期に10%するという公約を掲げてしまったのだ
これは、衰退の第三段階である「リスクと問題の否認」にソニーが陥ったことを意味する
「市場では10%という数字が既成事実化し、出井氏の認識の甘さを問う声が大きくなっていった」と日興コーディアル証券の三浦和晴アナリストは振り返る
しかも出井氏は、「面白い製品を生み出すことではなく、リストラで10%を実現しようとした」(幹部OB)
コスト削減が優先されるあまり、最先端の技術を追求するよりも、消費者に迎合する製品が増え始めた
似たような製品がソニー内の別事業部から乱立する一方で、「新製品を作っても、出井さんは評価してくれないだろう」(エンジニア出身OB)という雰囲気が蔓延
社内で斬新な製品に挑む社員が減っていったとされる
そして、2005年6月、ハワード・ストリンガー氏に「一発逆転」を託す格好で出井氏は退陣することになる
ストリンガー氏はリストラに取り組む一方で、韓国サムスンと液晶パネルの合弁会社を設立
今年に入り米Googleと提携するなど競争力強化に手を売っているが、「業界のトレンドを作るのではなく、追いかける側に回っている」とシティグループ証券の江沢厚太氏アナリストは指摘する
ソニーはコリンズ氏が説く衰退の第四段階「一発逆転の追求」から抜けだせず、かつての輝きを取り戻せていない