2011年08月

20110530日経ビジネス

20110530日経ビジネス

■永守重信 日本電産社長
今期については事務方の出してきた予想は楽観的だったのだけれど、僕は売上で550億円ぐらい減るかもしれないと思った
震災の影響が大きいと言うと顧客から外されるかもしれないと思うから、みんなが「問題がない」「問題がない」と言うような時は、あとになって意外に影響が出てくるものだ
それで変えた
あり得るリスクをギリギリまで見ていかないと何かあったときに想定外ということになるわけで、それではダメだと
これからの世界経済は「先進国vs新興国」という構図になるのだろう
例えば、日本市場は縮小が避けられないが、新興国の市場は当面成長し続ける
だから結局、日本企業も韓国企業がやったようにそとへ出ていくしかない
新興国で勝つにはまずは母国でもっと企業が結びつかないとダメだろう
M&Aで統合しないとダメだ
戦国大名が天下を取ろうと京都を目指す時に、国元では周辺の大名を征服したり、同盟を結び後顧の憂いをなくしたのと同じだ
1997年のアジア危機の際、韓国はIMFの管理下に置かれた
これが契機となり、企業統合が進み強くなった
だが、日本ではなかなか企業統合が起きない
例えば、何も日立製作所と三菱電機、東芝の全部がくっつけと言っているわけではない
特定事業を対象にした統合でもいい
そうしなければ、もう世界市場では勝てなくなっている
世界市場の中で新興国市場が中心的位置を占めるようになった今、競争の構図は従来とまったく変わった
多くの日本企業は、中国など新興国の企業がどんどん安いものを出してくる時、「我々は高級品でいく」と考える
大企業ほどすぐにそう言う
僕が日本電産を創業した73年にアメリカにはRCAという巨大電機メーカーがあったけど、十数年でつぶれた
誰にやられたかといったら日本の電機メーカーだ
今で言えば、韓国や台湾、中国のメーカーにやられたようなものと言える
どうしてやられたかというと、高級品に逃げて低価格品はOEMにしたわけだ
今、日本の会社が中国の会社や台湾の会社にパソコンや他のものを作らせているが、それに似ている
高価格品市場だけで生きていけるというのは、技術過信に基づいた発想でとても危険だ
技術だけで売れるなら、新興国市場はこれまでみな先進国の製品で埋めつくされていたはずだが、そうはなっていない
日本の企業間の取引関係も変わるだろう
昔は、例えばトップ5ぐらいにいれば、シェアが低く利益は少なくても赤字にはならなかった
だが、今やグローバル化で競争が激化し、買収や合併が起きたり、破綻したりしてサプライヤーの数が減っている
世界ではこうした淘汰がどんどん進んだ
しかし、日本では特に自動車産業で、依然として系列関係が残りかなりの数のサプライヤーが残っている
電機では系列は崩れたが、企業数はまだ多い
震災からの復興期過程では、安くていいものを早く作るところから部品や部材を調達するように変わるだろう
これは不可避の潮流だ
自由競争に完全に身を置かないと、日本企業は世界の中でもう勝てない
サプライヤーが減るとサプライチェーンが脆弱になると危惧するかもしれない
だが、これは生産拠点の分散で対処可能だ
日本電産は、世界シェア80%を握るハードディスク用のスピンドルモーターを中国、フィリピン、タイの3ヶ所で作っている
1工場で生産する方が効率が良い
しかし、世界シェア80%もあると自然災害だけではなく政変、火災などにも備えなければならない
1ヶ所で作っていて被災したら、それこそ世界のパソコン生産が止まってしまう
在庫を持たないとかジャストインタイムとか言い続けてきたが、そういう効率の追求だけではダメだということが、今回の震災でわかったのではないか
日本が強みにしてきたモノ作りの仕組みは変わらないといけない
系列取引が残っているのは、自動車産業ぐらい
電機はもう崩れている
安くていいものを世界から買うというふうになっていくのではないか
(問:サプライヤー側は高シェア製品を持っていても、利益が取りにくくなっている)
一つ言いたいのは、過去の実績にこだわり過ぎたらダメということ
例えば、うちはハードディスク用の精密モーターで成長してきた
だが、ここにきてパソコン市場は、(ハードディスクを使わない)タブレットパソコンが伸びてきた
こうした状況をみるにつけて、やはりビジネスのポートフォリオというものは、時代に応じて変えなければならないと思う
過去10年でも、フィルムカメラがデジカメに変わり、ブラウン管テレビが薄型テレビに変わり、固定電話は携帯電話、さらにスマートフォンに移ってきた
目指す機能は同じでもモノが違う
ビジネスに永遠という言葉はないのに、経営者にはなかなかそれが見えない
当たり前だが、そんな変化を見極めるのが、競争を生き抜く上で最も大事なことだ
市場の変化が誰にも見えるようになってから対応しようとしても技術はすぐに開発できない
M&Aはそんなとき時間を買う役割も果たす
だから、自社で事業を育てていくことと、M&Aで時間を買うことは今後成長の両輪になるはずだ
先が見えない時代だから、経営力が問われる
社長交代の挨拶でしばしば「前社長の経営方針を踏襲する」という声が聞かれるが、踏襲するのではもうアウトだ
だから企業は経営者をどんどんスカウトしないといけないし、優秀な人を引っ張らないと変化についていけなくなる
そのためには、コストを惜しんではダメだ
我が社は昨年、アメリカの電機大手エマソン•エレクトリックのモーター事業を買収したが、この会社の社長の給料は僕より高い
その上で長くやらせるべきだ
大企業にありがちな2期4年といったことではダメだ

アメリカ企業がときどきなぜとんでもない高値のM&Aを行うのか
彼らはキャッシュフローで考えている
(多額の設備投資で減価償却費などが大きくなり)営業赤字になっていても、営業フローが大きければいい
そう考える訳だ
それなのに日本企業はまだ買収した企業の営業利益が赤字だと、何で買ったんだと怒られる
そんなこと一つもわかってない

日本企業はもう一度、世界で血みどろのシェア争いをしなければいけない
繰り返しになるが、低価格品は新興国企業に任せるなどと言っていたら、やがてやられる
戦い抜くというスピリッツがないとダメなんだ
厳しい競争の時代を勝ち抜くには、韓国がやってきた税制や産業政策のような国を挙げた企業支援の政策が必要かもしれないがもう待ってはいられない

■柳井正 ファーストリテイリング社長
近年の日本の状況は、僕が故郷で直面した苦境と重なります
僕の故郷は山口県の宇部市にあります
炭鉱の街として発展しましたが、エネルギー革命で石炭から石油に燃料の主役が移ると急速に衰退しました
僕の実家は宇部の商店街で洋服店を営んでいました
炭鉱の衰退に追い討ちをかけるようにチェーンストアが進出してきて、商店街は急速にシェアを奪われて活気を失っていった
僕は宇部の外に出て行ったからうまくいったけど、そのまま商店街にとどまっていたら、潰れていたと思う
今の日本の状況と同じです
空洞化、空洞化というけれど、日本だけでは今の収入も維持できないんですよ
日本を食べさせていくのは、グローバル化した企業とグローバル化した日本人なんです
日本を支えていくには海外旅行展開しかありません
この想いは震災を経てますます高くなりました
短期間にグローバル化を果たしたアップルやGoogleのように五年、十年といったスパンで一気阿成にグローバル化を果たしたいと思っています
今までは欧米でナンバーワンになることが世界一に、なる近道でした
しかし、これからはアジアでナンバーワンになることが世界一になるかもしれない

20110523日経ビジネス

20110523日経ビジネス

■九州
有史以前から大陸文化のゲートウエーはいつも九州だった
農業技術や金属器といった大陸文化は対馬や壱岐、五島列島、琉球などを経て、日本列島に伝播した
平安時代中期。貨幣経済の基礎を築き、平家の覇権を支えたのは博多など宋銭である
さらに室町時代。室町幕府が始めた日明貿易は南蛮貿易へと発展、茶器や砂糖、銃、印刷技術、キリスト教と、九州に流れ込んだ産品は後の日本に多大な影響を与えた
そして、明治維新。日本に近代国家を成立させた原動力海外の技術や文化を吸収し続けた薩摩藩や佐賀藩などの雄藩にほかならない
そのあと、北九州の官営製鉄所で日本の産業革命が始まったのも偶然ではない

この国の歴史を紐解けば大陸の技術や文化は九州に入り、九州を起点に広がってきた
だが、東京への中央集権が進むと九州は徐々に中心から外れていく
特に昭和30年代に炭鉱が衰退すると、九州は東京や大阪など大都市に労働力を供給する存在に転落した
バブル崩壊後には、人口減少が加速、博多など一部の地域を除き、各地域は今も経済の低迷にうめいている

九州を独立体と見た場合、九州と台湾には類似点が少なくない
面積はほぼ同じ
GDPも九州の3900億ドルに対して台湾は4200億ドル
人口は台湾が2316万人と1326万人の九州より少し多い
ところが輸出額を見ると、2746億ドルの台湾に対して、九州は858億ドルとわずか30%に過ぎない
外資系企業の進出数も約25000社に対して、九州は約100社だ
久留米大学の永池教授はこう指摘する「グローバル化を真剣に進めてきたかどうかの差」


■ノリエル•ルービニ
PIIGSとしてしられる国々が抱える公的債務と民間の債務は、維持不可能な水準へ上昇しつつある
特に深刻なポルトガル、アイルランド、ギリシャは、市場での資金調達の道が閉ざされた結果、EUとIMFの融資による救済政策が実施された後でさえ、資金調達コストがここ数週間で過去最高となった
スペインの資金調達コストも上昇している
ギリシャの財政が破綻しているのは明白だ
GDPの10%に相当する極めて厳しい緊縮政策を実施しても、公的債務残高はGDP比160%に上る
過去10年間経済成長が停滞しているポルトガルもゆっくりではあるが、政府の財政破綻に繋がりかねない財政危機が進行している
アイルランドとスペインは既に膨れ上がった公的債務を抱える政府のバランスシートに金融セクターの膨大な損失を移転しようとしており、こちらもまた公的債務の破綻に至りかねない
こうした危機に対する公式の対処方法「プランA」はこれらの国々が直面しているのは流動性の危機であり、破綻か否かという問題ではないというふりをするというものだ
流動性の危機なのだから財政緊縮策とこうした構造改革を条件として救済融資を拠出すれば債務の適切な維持管理と資金調達市場へのアクセスを取り戻せるはず、という見方だ
こうした「知らぬふりをして手を差し伸べる」、あるいは「貸して、後は祈る」というアプローチは絶対に失敗に終わる
なぜなら、過去に過剰債務を抱える国々が取ってきた対応策の大半は、残念ながら今回は採用不可能だからだ
例えば、通貨供給量を増やしてインフレを発生させ、実質的な債務を軽減するという伝統的な手段はユーロ加盟国という制約があるPIIGSには使えない
通貨供給量を増やせるのはECBであり、ECBが財政赤字解消の手段としてマネタイゼーションに踏み切ることはありえない
またこれらの国々のGDPの急成長も期待できない
PIIGSの公的債務の規模はあまりに大きすぎて高い経済成長の達成は不可能に近い
加えて、どのレベルの経済成長であれ、成長できるかどうかは政治的に国民に不人気な改革を実現できるかどうかによる
しかもその改革はどれも短期的な痛みを伴ううえ、効果が出るまでには時間がかかる
よって、これらの国々で経済成長を回復させるには通貨を実質的に切り下げて対外競争力を取り戻し、貿易赤字を黒字に転換させなければならない
しかし、ECBがあまりに早期に金融引き締め政策を取ったことで、ユーロ高が進行した結果、国際競争力は逆に低下してしまった
コストを圧縮し、(ユーロの)実効的な減価を実現し、対外的な競争力を回復するための最後の選択肢は賃金と物価の引き下げ(デフレ化)だが、これにはさらなら景気後退が伴う
対外経常収支を改善させるために必要となる実効的な通貨の減価はユーロベースの債務価値を増大させることになり、これまで以上にユーロ建て債務の維持が困難となりかねない
個人貯蓄を増大させるために民間消費と公的支出を抑制すること及び、民間と公的債務を、減らすために緊縮財政を実施することも選択肢に入らない
民間部門は消費を控えて貯蓄を増やすことは出来るが、これは「ケインズの倹約のパラドックス」として知られている現象をただちに引き起こす
つまり、生産量が低下し、GDP比対比での債務が上昇する、というものである
IMFなどの最近の研究によれば、増税、補助金の削減、非効率なものも含めた政府支出の圧縮は、短期的には成長を妨げ、債務問題を悪化させると見られている
もしPIIGSが自らインフレを起こせず、成長も通貨の切り下げもできずに、今抱える問題から抜け出せなければ、プランAは機能していないか早晩失敗するということだ
残る唯一の選択肢は即「プランB」に移行することだ
つまり、これらの国々の政府、家計、金融機関が抱える債務を秩序正しく再編、圧縮することである
それには様々なやり方がある
例えば、PIIGSの公的債務の元本はそのままにして、秩序あるリスケを行う
つまり、債務の償還機嫌を先延ばしし、新しい債務の金利を現在のとても負担できない市場金利より大幅に下げるということだ
この方法だと、他国に信用不安が波及するリスク及び、債務の元本価値が減少して金融機関が損失を被るリスクを限定できる
政治家は1980〜1990年代にかけて累積債務に苦しむ途上国を、救済する際に使われた当時としては革新的だった手法についても検討してみるべきだ
例えば、債券の保有者に対して、既存の債券を将来の成長率に応じて利払いが決まるGDP連動債に交換することをもちかけてみるのだ
GDP連動債は、債券の保有者を一国の経済の株主に変えるものであり、一時的に債務を減らしつつ、連動債保有者には国の将来の利益の一部を受け取れると保証することになる
住宅ローンの額面を減らし、将来住宅価格がもし上昇した場合にはその上昇分を住宅債権を持つ銀行に付与する
これも住宅ローン債権を部分的に株主資本に転換する方法となる
銀行が発行する債券も、価値を圧縮したうえで資本への転換が可能だ
これにより銀行の損失を社会全体で負担することが国の債務危機に発展してしまう事態も妨げる
欧州はもはや域内諸国に対して資金を拠出し、あとは将来の経済成長と時間が問題を、解決してくれますようにと祈っている余裕はない
債権者も債券の保有者もPIIGSのため、EUのため、そして自分たちのために、それぞれが負担をおわなくてはならない

20110509日経ビジネス

20110509日経ビジネス

■バリー•アイケングリーン
最近話題になっている政策案は、特別引き出し権(IMFのSDR)をドルに対抗できる国際通貨に作り変えようというものだ
だが、これは最終的に実際的ではないことが判明しよう
SDRの問題は、クロスボーダー取引の決済や国際的に流通する債権の通貨建てとして使われたことがない点だ
つまりSDRの流通市場が存在しないわけで、そうした市場を創設するのは時間を要し、容易ではない
さらにSDRが真に国際通貨となるには米リーマン•ブラザーズ破綻後にFRBが各国中央銀行に総額1200億ドルの緊急融資を行ったように危機の際にSDRを発行できる権限をもつ必要がある
言い換えれば、IMFは世界の中央銀行となり得る力を与えられなければならない
自由主義者でアメリカに中央銀行が必要かさえ疑っている米上院銀行委員会のロン•ポール委員長がそうした考え方に同意するとは考えにくい
むしろ、ドルを中心部とする今日の国際通貨•金融システムにとって代わるのはドル、ユーロ、人民元による3極体制だろう
ドル以外の外貨準備手段があれば、アメリカがドルを潤沢に持てるように支援する必要も薄れるからだ
結果、世界の金融市場はより安全になる
2007〜09年にかけての金融危機とは結局、世界経済が多極化しているのに、金融•財政システムは依然としてドルだけが支配する体制であることの矛盾が原因だったといえる


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