2011年12月

銀、プラチナ、コマツとかガンガン下がりそうな気が

チャート見てるとさがりそうだなー
あとソフトバンクとかも
海運系とかみてると一旦そこをつけた感じだったけどこれらにつられて全体的に市場が下がるのかな?

それともただの年末の薄商いのせいなのかな、、

原田永幸 講演3 東洋経済

http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/dc1199d974ebf6877dbea73e40624107/


 やはり商売は直感がいちばん大事だと私は思います。データに頼れば頼るほど、想像力の阻害要因になりますし、新しい時代を読むことはできるかもしれませんが、時代を創るためのクリエーティブネスを損なうかもしれないと思っています。
 そこで私は社員に「いろいろなリサーチをする前にお店に行け」「お店に行ったら商売のにおいがする」「商売のにおいがしないやつは、もうそこで失格だ」と、こういう言い方もしています。
 たとえば新商品を出したとします。コンビニでも常識ですが、最初の2週間で1人のお客様が再購買されると、これがヒット商品の大事な見極めポイントとなります。
 それをリサーチでお客様にリピートパーチェスのテストをやります。「再購買の意思がございますか?」と聞くと、日本人は意思がなくても「はい」と答えます。そのようなデータではなく、お店に行ってお客様が食べていらっしゃるときの目を見ます。目を見た瞬間、本当のことがわかるのです。これが商売のにおいをかぐという典型的な事例です。
 そして、お店に行ってお客様やクルーと話をすること。クルーは嘘をつく必要がありませんので、彼らと話すと真実がわかります。そしてお客様の行動がすべての検証です。

 自分が信じるものを作り、それを実行することが経営戦略です。その実行を客観的に検証し再確認するためのツールがデータです。
 よって戦略企画はリサーチデータで生むものではないと私は強く思っています。リサーチデータで戦略が立案でき成功するのであれば、世の中、倒産する企業はないでしょう。リサーチデータという結果から将来を検証する、予見することはできますが、戦略の成功を担保するものではないと思います。

 繰り返しになりますが、「基本」「らしさ」を徹底して考えることが重要です。たとえば、私どもの商品にコーヒーやホットドッグがあります。これはビッグマックやマフィン、マックグリドルのように、わが社でしか作れないものではなくコモディティです。
 「らしさ」と言いながら、なぜコーヒーやホットドッグを売っているのか。それは、わが社しかできない商品、ビッグマックをもっと売るためです。
 コモディティで新規顧客をお招きし、ビッグマックの売り上げにつなげること。すなわち冒頭に申し上げた基幹ビジネスを成長させるための新しい施策です。
 簡単に申し上げると、コーヒーが売れればビッグマックが売れる。ホットドッグを出せばビッグマックが売れる。これが、結果の検証の1つのチェックポイントです。
 そういう意味で、「らしさ」だけ追求すればいいわけではなく、「らしさ」を持った商品をもっと売るためにコモディティの戦略的なポジショニングも必要だということです。
 乱暴な表現になってしまいますが、ビジネスの非常識を常識にすること。ニトリさんの商品やユニクロさんの商品を見ても、非常識だった世界を常識の世界にしてきた結果だと思います。つまり、新しい世界、新しい常識を創ることが、新しいビジネスのリーダーシップにおける基本的な振る舞い方なのではないでしょうか。
 社員は、できない理由をよく言ってきます。できない理由があればあるほど、それを実現することが、他社の追随を許さない強い競争力を生むことになるのです。
 また、ビジネスはスピードです。13カ月でやることを12カ月でやれば、売り上げは12分の13倍になります。それぐらい簡単なことです。したがって「決定したらすぐやれ」とよく言われますが、「決定しなくていいからやれ」というぐらいの感覚で動かなければいけません。
 ここで重要なことは、決定する人と実行する人をきちんと分けることです。2人で決定することを4人で決定させると、対角線での議論になるので2倍ではなく4倍の時間がかかります。少ないメンバーで質の高い決定をし、多くのメンバーで実行することが、組織の基本的な考え方であろうと思います。

原田永幸 講演2 東洋経済

http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/94d88ba510ad0bb1fcd904e4023cd046/


 価格には3つの考え方があります。1つ目は「コストプラス」。これはコストにマージンを乗せて値段を付けるものです。2つ目は「コンペティティブプライス」。いわゆる競合価格です。そして3つ目が「ディマンドベースプライシング」で、わが社の得意とする価格体系です。
 これは需要を最大化し、財務的な結果を最適化するための価格政策という考え方です。過去のレシート分析をしながら、単品の価格をどう変えたらお客様の行動がどう変化するかを予見していく手法で、ここには長年のノウハウがあります。このディマンドベースプライシングをいちばん大きな軸として考え、コストプラス、コンペティティブプライスを1つの検証として考えています。

 また、どういう価格付けであろうと、価値を提供し対価をいただくわけですから、いちばん大事な点は値段を上げるときには価値を上げる、という原則です。さらに、無形の価値の部分も顧客価値認識としては見据えなければいけない大きな柱になります。
 価値と価格の組み合わせを幾つか見ますと、まず価値を変えずに値段を下げる。よくある円高還元セールです。この方法は需要を喚起しますが、マーケットシェアを奪うシェアゲームにしかなりません。また、ガソリン高騰のために値段を上げたり、少しボリュームを少なくしたりして同じ価格で提供することもよくあります。

 また、地域別に値段を5段階に設定しました。現在ナショナル・ブランド、グローバル・ブランドを持っている商品は、全国どこでも同じ価格です。人件費も家賃も違う中で、ワンプライスでいいのだろうかということで、5段階の価格を展開しました。
 最近では5段階に加えて、羽田空港、成田空港といった特殊な場所は、いちばん高い東京よりもさらに高く設定しています。今は地域別価格ですが、今後はロケーション別に設定する機会も出てこようかと思います。


原田永幸 講演 東洋経済


http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/e103223cfc5b97e880fcb50d98f80667


経営の基本は、不振なときほど基本に立ち返る
基本なくして新しいことに投資しても、まったく効果を生みません
 特に順調なときに基本を忘れたり、厳しいときに基本を忘れたりすることは、人間の習性です。厳しい状況に直面した会社が、考えなければいけない基本を忘れて、いわゆるリストラで目の前のリカバリーを図ることに終始し、世の中から消えていった例は歴史的に多数あるのです。
 マクドナルドは不振の時代に、マクドナルドでしか実現できない価値の提言を忘れてカレーライスやおにぎりを展開したり、値段を上げたり下げたりし、また、基幹ビジネスの不振を何とか補完するための新規ビジネスに着手しました。

 基幹ビジネスが順調なときの新規ビジネスや、コアの基幹ビジネスを強化するための新規ビジネスであれば成り立ちますが、それが基幹ビジネス不振の補完のためという考え方は、非常に危険だと思います。ここで「らしさ」というキーワードは、極めて重要になるのです。

流通王4 大塚英樹

流通王4 大塚英樹


「僕には戦争に対する負い目がある。従軍した中国やフィリピンで戦友をなくし、、靖国神社の鳥居を今持ってくぐることができない。こうして生きていること自体、戦死した戦友に対して卑怯に思えるからだ。そういう後ろめたさが僕にはある」
中内を一途に仕事に駆り立ててきたのは、戦死した戦友たちに対する負い目だった
豊かな社会づくりに貢献しなければ、彼らに申し訳が立たない
この思いが、創業以来、一日たりとも仕事を休まなかった彼の原動力となった
そんな中内が、戦争賛美の風潮や軍備拡張論を嫌ったのは、当然のことだった


ダイエーの経営がおかしくなってきたころ、中内は、カルフールやウォルマートなど外国資本でダイエーを買収してくれるところがあれば、ぜひ買って欲しいと思っていたようだ
その一方で、ジャスコやイトーヨーカドーなど、かつてのライバル企業に買収されることだけは、なんとしても避けなければならないと考えていた
第一に、ダイエーが下位のスーパーに買収されるのは、「戦後の流通産業をリードしてきた」と自負する中内のプライドが許さなかった
第二は、ダイエーのブランドが、ライバル企業に抹殺される可能性があったからである
そしてなにより私は、中内と、ジャスコの岡田卓也、イトーヨーカドーの伊藤雅俊•鈴木敏文の商売人としての本質の違いに、その最大の理由を見出せると考えている
中内は、ダイエーと他のスーパーとは、社会使命という点でまったく異なるものだと考えていた
ダイエーは、流通革命という一大社会革命を行う機能であるが、ジャスコやイトーヨーカドーは、利益を上げることだけに汲々としているプロフィットセンターに過ぎないのではないか
そんなプロフィットセンターと同様に扱われてなるものか、という思いがあったのだろう
中内は、革命を目指し、新しい事業を推進し、社会を豊かにすることに喜びを感じた
中内はよく私に言ったものである
「借金を惜しんでいては、事業は広がらない。事業を広げる、これが僕の基本的な考え方だった」

事業を面で捉えた中内は、顧客創造に全力を挙げた
中内は語っている
事業の目的についての正しい定義は一つしかない、それはドラッカーの言う顧客を創造することである、と
中内はドラッカーのこの言葉に深い感銘を受けた
利益を出すのは、その後の話
まずは顧客を創造することを最優先に考えたのである
顧客を増やし、商圏を拡大すれば、収益はついてくると考えた
新事業による複合事業化、業態の多角化
問題は、中内のマネジメント手法であった
中内は仕組みでマネジメントする手法を選んでいる
人がマネジメントするのではなく、システムがマネジメントするというのである
店の成績が悪ければ、店長やバイヤーのやり方が悪いのではなく「システムが働いておらんからや」とシステムの欠陥を指摘し、見直しを命じた

中内は、イトーヨーカドーの伊藤雅俊やジャスコの岡田卓也と一緒にされることを嫌った
彼は伊藤や岡田をライバルとは見ていなかった
中内ぎ気に入っていたのは、西友を率いていた元セゾングループ代表の堤清二だった
「彼は、古今東西の歴史や文化に造詣が深く、よく勉強している。彼の知識はすごいよ」「パルコ劇場、ロフト、ウェイブ、発想が面白い」「あれほど文化を持っている経営者はいない」と褒めちぎっていた
それでも最後まで対抗意識を燃やしたのは、イトーヨーカドーだったとりわけ、社員から上がってきた鈴木敏文であった
セブンイレブンを躍進させ、イトーヨーカドーの業績を伸ばし続けた鈴木は、典型的な経営のテクノクラート(官僚)であった
その特徴は社員に考えさせ、社員に判断させ、社員に行動させるという徹底した社員主役主義に基づく経営にあった
信賞必罰を厳しくして、結果を出した社員は厚遇し、出さない社員には猛省を促す
一方、再挑戦の機会も与え、モチベーションを上げているのである
鈴木は社員に問うだけである
なぜ、こういう結果になったのか
なぜ、売れ筋を追求しないのか
なぜ、新商品が売れないのか
なぜ、素人の発想をしないのか
なぜ、なぜ、なぜ、、、。
いわば、問題提起者としての役割と羅針盤となっているのである
鈴木は現場に出ない経営者として有名である
「現場、現場といって、自ら現場に出かける経営者が多いようですが、私は店にはあまり出かけませんし、タウンウォッチングもしません。私は音楽でも、ファッションでも、若者の間で流行しているものは理解できませんからね。•••店がどんな状態かは、数字を見ればわかります」
経営者は現場には出る必要がない、と鈴木は言い切っている
そこが、現場を回って自ら指示を出した中内と、まったく違うところである
鈴木が経営者としてもっとも大事にしたのは、社員との緊密なコミュニケーションであった
上と下のコミュニケーションが円滑にいくように、情報のパイプを太く短くした
組織は固定させたら淀む
絶えず刺激を与えてかき混ぜなければならない
特に問題なのは、幹部と中間管理職であるという

社員教育のやり方においても、中内と鈴木では大きく違った
鈴木が行った教育は、社員に、世の中はどんどん変化していることを認識させ、社会の変化を肌で感じさせることであった
そのために鈴木は、「朝令暮改がどんどんできて、古いものを壊すことができる人間でないといい人材とはいえない」と変化対応人間になるように口を酸っぱくして言った
中内のようなアカデミックな理論など必要とせず、OJTを重視し、いかにして顧客が欲しがるような商品をつくり、いかに店を繁盛させるかという、その一点に集中した
経営面では、ダイエーのような中央集権体制など最初から考えていなかったいかに売れる商品を開発するか、いかに売れる店づくりをするか、いかに顧客に満足してもらえるサービスをするか、というテーマに対して、大所高所からの理論ではなく、まさに現場の変化を肌で感じるようなやり方で社員を教育し、社員に権限を移譲し、考えさせ、創意工夫を促す自主的な経営手法をとった
それが、結果として業績アップに繋がり、しかも業容を無理やり拡大せず、効率のよい経営を可能にした
一方、中内は、店内のレイアウトから店長の権限、仕入れ本部のやり方、店長は機能としてどうあるべきかということまで、一から十までマニュアル化した
中内も、その中で、時代の変化に応じて変えるべきものを変えればよかったのだが、人間というものは、自分がつくりあげてきたものを、そう簡単には変えられない

中内㓛と鈴木敏文との比較を一言で言えば、中内は「what(なにをすべきか)」を突き詰めていった経営者、鈴木は「how to(いかにすべきか)」を突き詰めている経営者という気がしてならない

流通王3 大塚英樹

流通王3 大塚英樹


「文化というものは、いかがわしさから生まれる。歌舞伎も浄瑠璃も常磐津も端唄も、みんな、いかがわしさが発祥だ」
中内はよくこういった

文学でも演劇でも音楽でも、メジャーになるまではいかがわしいと言われる
そのいかがわしさが文化を作る
いかがわしくなければ文化は生まれないし、そうして生まれた文化も、メジャーになった時点で文化ではなく権威になる
権威はもはや文化ではない
中内はこのように考えていた

ダイエー、一号店を千林に出店した昭和30年代初頭の日本では、スーパーマーケットは「スーッと現れてパーッと消える、いかがわしい商売」だと見られていた
人々がいかがわしいと言うからこそ、これはいけるぞと確信を持ったのである
いかがわしいものにこそ、大衆を惹きつける魅力がある
中内の尋常ならざる好奇心は、こうした確信をベースにしたものである
そして彼は、自分自身の好奇心をそそるような大衆相手の様々な業態を開発し、展開した

これからの時代、横並びの状態から企業を突出させるには、経営者に中内のような旺盛な好奇心が不可欠である
しかしながら、今後の経営者に、いかがわしさを母体とする中内的な事業が、果たして本当にできるだろうか
グローバリゼーションの時代には、明確な経営ビジョンをはじめ、情報開示、経営の透明性、株主重視、収益重視、厳格な遵法精神といった要素が強く求められるからである
これらは、いかがわしさとは対極に位置するものである


「明治以前は、日本は大町人国家で、大町人が国を動かしていた。たとえば、江戸時代は侍が官僚の役割を果たしてきたが、官僚に金をだしていたのは鴻池、三井といった大町人だった。新しい文化もほとんどは町人によってつくられた。江戸時代には、けっこう遊びがあった。日常生活の中に、浄瑠璃、長唄、芝居、さらには伊勢参りなど•••。」
ところが明治時代以降、日本人にあそびがなくなっていったと中内は考えていた
「遊びの文化、町人文化が栄えたのは、江戸時代までやね。明治以降は官僚主導で、列強に追いつけ追い越せという政策をとった結果、遊びの文化は廃れ、産業一辺倒になってしまった。•••文化の回復と称してゴッホやミレーの絵を買ったりしているけど、そんなもん買っても、文化とは言えない。日本人自らがなにかをつくっていくというプロセスが大事なんやから」
中内は明治以降の歴史をすべて否定していたわけではない
日本が産業を興し、技術革新を行い、生産力を欧米の水準にまで高めてきたことには、それなりの意味があったと考えていた
しかし、生産第一主義の工業化社会が長く続き、官民一体による重工業中心の経済秩序ができてしまった
そのため、本来的にはゆとりと遊び心を持っていたはずの日本人の気質が歪められてしまったと、中内はその弊害を指摘したのである
「明治維新を境に、日本人はゆとりや遊び心、つまりプロセスの大切さを忘れ、結果だけを重視する、せっかちな気質にかわかってきたのではないか。日本人はせっかちだとよく言われるが、昔からそうだったわけではない。明治政府が近代化を図る上で効率化を最優先したため、時間の消費は悪、時は金なり、といった考え方が主流を占めるようになったのだ。だから、逆に言えば、明治以前の江戸時代までは、日本人は結果に関係なく時間を上手に消費して、プロセスを楽しんでいた民族なんだと思う」


中内はアメリカのスーパーマーケットに多くを学んだが、とりわけ注目したのは、そのシステムだった
アメリカでスーパーのチェーン展開が可能になったのは、システム化の賜物にほかならない
中内が模範としたアメリカの商品の集荷システム、配送システム、店舗システムなどは、その典型例であった
中内経営の特徴は、なにごともシステムで動かすことに腐心したということであろう
中内ほど、仕組みづくりを強調してきた経営者はいない
事業は仕組みで動かさなければいけないと唱える
店舗開発も、仕入れ業務も、物流も、店も、店内サービスも、みんな仕組みで動かす必要がある
仕組みが機能して初めて人間が動く、すなわち「初めに仕組みありき」なのであって、「初めに人間ありき」ではないというのだ
経営者の多くは、企業は人が資産だと考える
企業によっては、人材を人財と書く企業もある
「人材は企業の宝」であり、「人材こそ企業のすべて」というわけだ
そんなことは百も承知の上で、中内は仕組みづくりを強調するのである
なぜシステムなのか
中内が目指したのは
寡占化する巨大メーカーに拮抗する流通勢力をつくり、消費者主権を奪還する流通革命だった
そのためにナショナルチェーン展開を行い、コングロマーチャント(複合小売集団)を実現させて全国をダイエーのオレンジ色に染め抜く
これは点とか線の事業ではなく、いわば面の事業である
それだけに急がれる
バイヤーも店長も、ひとつの機能として捉えていかないと追いつかない
だから、誰が店長をやっても、機能としての店長だから店は自然と動く
人がどんどん変わっても仕組みとしてやっていける態勢
これが、中内の目指すシステム重視の事業のあり方だった


日本には、戦後を代表する経営者が何人かいる
例えば、本田宗一郎
浜松の自動車修理工場から身を起こし、ホンダを世界一の二輪車メーカーへと育て上げ、そのあと四輪車に進出
低公害のCVCCエンジンなどの画期的な技術で世の中に貢献した
ソニーの創業者である井深大も、世界最小のトランジスタラジオを開発して、世界中に売りまくり、世界のソニーブランドを確立した
経営の神様と呼ばれた松下幸之助は、自前の経営理念と長期的ビジョンを持ち、それに沿って組織戦略を立てて経営を実行した
彼の経営理念の一つに水道哲学と呼ばれるものがある
松下幸之助は、経営者であると同時に、経営思想家としての側面をも持ち合わせていただが、こうした戦後を代表する経営者たちも、社会システムを変えるほどの革命的な事業家であったかというと、ほとんどがそうではない
これらの経営者は、商品の発明、開発で新しいライフスタイルを世の中に送り出しはしたが、それで社会のあり方を変えたわけでもなければ、大衆の生活サイクルを一変させたわけでもなかった
対して、われわれの日常生活もっとも密着しているのは、自動車やラジオやテレビではなく、日々消費する食品や日用雑貨扱う店である
中内はその店を全国各地につくり、よい品を安く提供し、それまでの日本にはなかった「一般大衆にとって都合のよい社会」を築きあげた
それだけではない
メーカーに安くてよいものをどんどんつくらせて、そこで働く人々の給料を押し上げた
さらに、地方都市にダイエーが進出することによって、周辺のショッピング環境が整備され、土地の価格を上昇させた
そこに住宅地ができて人口が増加すれば、幼稚園や学校や図書館も、さらには病院などもつくろうということになり、地域社会は発展していく
こうして、中内は、ショッピング環境にはじまり、住宅環境、教育環境、医療環境を整備するといった、社会そのものが大きく変わるきっかけをつくっていったのである
その意味で中内は、戦後の経済成長を利用したのではなく、高度経済成長時代をつくり出し、演出した真の事業家であった

中内はまた、「俺は事業家であって、社長ではない」という言い方もしていた
社長というのは、会社が順調に存続できるよう運営管理していくスキルを持った経営のプロのことである
そこで絶対にやってはいけないことは、会社を潰すことである
会社が存続できなくなるような状態に陥ることだけは、なんとしても避けなければいけない
中内の場合、事業を興しただけでなく、経営のプロに任せるべき会社の運営管理までも自分でやってしまったところに問題があった
第三者に任せきれなかったのである
右肩上がりの時代はそれでよかったかもしれない
だが、いまの時代に中内のようにやりたい放題に会社を経営したなら、おそらく一年ももたずに潰れてしまうだろう
実際、バブルが弾け、経営環境が変わり、ダイエー本体の収益が頭打ちになっているにもかかわらず、そのあとも同じようにさまざまな事業に手を出してはさらに巨額の借金をする、依頼があれば企業の買収や合併を手当たり次第に行う
こんなずさんな経営をしていて、企業が存続できるはずがなかった
1980年代になって、ダイエーの業績が低迷したとき、中内は初めて外部から再建請負人を招き、実質的な経営者に据えて、奇跡のV字回復を成し遂げた
しかし、そのときでさえ、中内の興味や関心の対象は業績の回復よりも、自身の革命がどこまで進んでいるかにあった
V字回復を進めるために、自分がやろうとしている消費文化の革命のスピードが緩んでしまうことを懸念していた
事業家•中内㓛の最大の失敗は、間違いなくダイエーの運営管理を経営のプロに任せずに自分でやってしまったことだろう
事業家であるならば、新しい事業をつくり出すことだけに専念すればよかったのだ

流通王2 大塚英樹

流通王2 大塚英樹


ものづくり大国を標榜する日本では昔からメーカーの力が強かった
それは戦後45年間、経済団体連合会の要職に流通業界出身者がいなかったことからも明らかだ
流通業界の人間が初めて経団連副会長になったのは1990年(平成2年)のことであり、それは誰あろう中内であった

「ある製品について10%のシェアをダイエーが持てば、メーカーに対する影響力が出てくるだろう」と、中内は考えた
これを10パーセント理論という
たとえば、ある食品メーカーがA商品を年間50億円売り上げているとする
そのうち5億円をダイエーが売れば、その食品メーカーでは、ダイエーの存在を無視できずにA商品の価格そのものを見直さざるを得なくなってくる
これが中内の理論だ
そうすれば、それまでメーカーからの押しつけ販売で「売らせていただく」立場だった小売業が「おたくの商品をうちで売ってやる。だから値段はこうしなさいよ」といえる立場になれる
さらには、メーカーが考えて作ったものを売るのではなく、売り手の求めるものをメーカーに作らせるというやり方に変えていくこともできる
それが中内が日本で最初にSB商品やPB商品の開発に踏み切った理由である
そうしたバイイングパワーを育てないと価格破壊はできないし、大衆主体の消費社会にはならない
そう考えた中内は10パーセント理論を実行し、小売業界を牽引して、消費社会の仕組みを根底から変えてしまった


商人とは、社会を変えてやろうという大きな志を抱いて事業を興す人である
まったくなにもないところから、世の中をも変えてしまうような新しい事業を創造する人である
「近江商人がそれだ」と、中内は言っていた
たとえば、伊藤忠商事の創業者•伊藤忠兵衛、日本生命保険の創始者•弘世助三郎などである
言い換えれば、商人とは事業家である
片や、商売人というのは、個々の会社の利益を追求する人である
商売人にも志はあるが、それは、儲けたいということであり、社会を変えるような新しい事業を興してやろうなどという壮大な志とは相入れないものである
文字通り商売をする人なのである
イトーヨーカドーの創業者•伊藤雅俊は商家に生まれ、商売で鍛えられた生粋の商売人であった
ところが中内は「私は商人ですからね。ずっと商人でいたいんですよ」と言っていた
「自分の会社の利益をあげるためにやっている人と、俺は違うよ」ということを、常にほのめかしていたし、はっきりとそう口にすることもあった


銀行が企業と取引をする場合、業界の将来性、企業の財務内容、商売ぶりなどが重要になるが、当時の住友銀行頭取•堀田庄三は経営者の人物を非常に重要視する人で、「事業というのは人だ」と、よく言っていたという
住友銀行の主力取引先には、伝統的に個人オーナー的企業が非常に多かったのだが、それはひとつにはこのためだった
松田耕平の東洋工業しかり、井植歳男の三洋電機しかり、松下幸之助の松下電器、武田國男の武田薬品、長瀬徳太郎の長瀬産業など、みなそうである
「堀田は、「事業でいちばん重要なのは経営者だ。たとえ赤字の企業でも、経営者が立派だったら黒字になって伸びていく。経営者がなんらかの形で具合が悪ければ、今は繁盛している企業でも将来は危険だ」という考えの持ち主でした。その堀田頭取が、ひとこと「中内は成功するよ」と言った」

堀田は「なにか、担保はあるのか」と、中内に聞いた
「学校で習ったことですけれども、担保があって貸すのは質屋です。銀行は人と事業を見て貸すべきでしょう」
中内は生意気にもこう答えている
「そう、担保はあんたや」
堀田はそう言って笑った


「儲かると儲けるでは意味が違う。僕は、儲ける商売をやるつもりはなく、無理をしなくても儲かる企業を目指している。僕は、商売人ではなく、商人なのだ」
「商人と商売人の
違いはなにか。商売人というのは、どうすればうまいことやって儲けられるかを絶えず考えている。一方、商人は、どうすれば今の環境を変えながら新しいものを提案して儲かるようになるかを考えている。それが商人なんだ」
「私が見ているのは、個々の店のやり方ではない。全体のシステムが機能しているかどうかです。店づくり、仕入れ、品揃え、商品の陳列、客動線。新店を見れば、システムができているかどうかすぐわかる」


私は、経営者に必要なのは、使命感と先見力、洞察力、指導力だと思う
まず、社会的な役割と使命とを追求すること
それから「これからの社会はどう変わっていくか」を読む先見力
そして「今、社会になにが求められているのか」をダイナミックに捉え、「そのためになにをすべきか」を見極めていく洞察力
さらに、その読みに基づいて実行していく指導力(リーダーシップ)



中内には、恩師と仰ぎ目標としてきた人物は特に存在しなかったが、阪急電鉄、宝塚歌劇場、阪急百貨店、東宝など阪急コンツェルンを築き上げた小林一三をこよなく敬愛し、事業家としてのダイナミズムに憧憬(しょうけい)の念を抱いていた
「良い品をどんどん安く、より豊かな社会を」というダイエーの創業精神となったスローガンも、実は、1929年(昭和4年)の阪急百貨店の開店にあたって、小林一三が考え出した宣伝文句をヒントにしたものにほかならない

中内が尊敬し、経営理念を積極的に学ぼうとした経営者は、他にも数多くいる
たとえば、江戸時代に「薄利多売、現銀掛け値なし」をキャッチフレーズに、呉服や反物の安売り商法を編み出した越後屋(三越の前身)の創始者•三井高利もその一人だ
井原西鶴も尊敬すべき対象だった西鶴の商売に対する見識は、47歳のときに著わした「日本永代蔵」にいかんなく発揮されている
その中で西鶴が説いた商人の心得とは、
「正路(正しい道)」「才覚」「算用」であり、中でももっとも重要視したのが「正路」である
正路の備わった商売では、信用が大切にされ、口約束だけで取引が成立した
中内が若い頃から好み、口にしてきたのは、西鶴の「金銀こそ系図なれ」という言葉だった
金銀は尊いものだが、金儲けのためならなにをしてもいいというわけではない
なんのために商売をするのか、つまり働くことの理念がはっきりしていないと、単なるソロバン勘定に走ってしまいがちだ
そうした西鶴の考え方を、中内は頭に叩き込んでいた
井植歳男も敬愛する経営者だった
他に、大和ハウス工業の石橋信夫、サントリーの佐治敬三、森下仁丹の森下泰らの名前もあった


「義理や人情だけでは、社会は進展しない。合理的な精神がないと、やはりなにごとも進まない。しかし、それだけだと、人間関係がギズギズする。夏目漱石が言ったように、智に働けば角がたつ、情に竿させば流されるということで、そのへんの兼ね合いがじつに難しいね。僕は合理主義者と人情家の、どちらにも与しない」
「職場は一将の影などといわれるが、トップは部下からどう見られているかなどときにしていたら、仕事にならない。トップが部下たちの前で表情を繕う必要はない。経営者の表情ひとつで職場の雰囲気が左右されるようでは、ろくな職場ではない。経営者は、経営理念を語り、ビジョンを掲げ、それをシステム化していくための環境をつくり、方向を示すのが仕事だ。一方、部下たちは、原理•原則をわきまえて、仮説を立て、それを検証しながら仕組みをつくっていく。そういう当たり前のことを当たり前にやることが大事なんだ」
「頭が仕事から離れてしまう経営者は、経営者ではないと思う。一人の人間が、あるときは仕事を忘れ、あるときは仕事のことを考えるなんて、それは嘘や。•••そんなこと、できるはずがないやないか」

流通王 大塚英樹

流通王 大塚英樹


中内㓛は流通革命を志した
店舗数と店舗面積を増やすことで規模を拡大し続けた
売り上げが増えれば、必ず利益は出るという売り上げ市場主義をとった
ディスカウントストア、ファミリーレストラン、フードショップなど、様々な業態を開発して出店し続けた
しかし、同時にホテル、プロ野球、ドリームランドなど「なぜ、ダイエーが?」というような異分野事業にまで手を出してしまった
それも、金融機関から膨大な借金をしてまで事業多角化を推進したのである
中内は事業をチェーン店という面で捉えていた
個別の店の収益性にはあまり頓着しなかった
それだけに、収益を生み出す商品開発、効率のいいマネジメント、バイヤーの改革、仕入れ先との取引の改革などに取り組むのが遅くなり、気がついたときには
既存店の売上高は軒並み下降線をたどっていた
つまり、中内は、徹底した利益追求の努力を怠っていたのである
中内の至上命題は、「いいものを安く売ること」であった
売り上げ規模の拡大が第一で、利益をあげることは二の次であったのだ
でなければ、採算性のない遊園地やホテル、プロ野球などの異分野事業に参入したりはしなかっただろう
中内は、流通革命を追求する過程で経営者として多くの失敗をしている
小売業界の頂点を極めたあと、国内外の様々な資本との提携や買収を繰り返し、ダイエーを肥大化させた
世襲にこだわって中内一族でダイエーを固めようとした
バブル経済の崩壊と阪神大震災によって大きなダメージを受け、赤字に転落するという事態を招いた
そうして、一代で築いたダイエー帝国を自ら崩壊へと追い込んでしまった


中内家は、戦国大名の長曾我部氏の流れを汲む郷士で、江戸時代には土佐藩主•山内家の典医だったそうだ


1957年(昭和32年)9月23日、大阪の京阪電鉄•千林駅前に、ダイエーの一号店がその産声をあげた


創業当時のダイエーにはこれといった新しい設備もなく、13人の従業員もシロウト集団だった
毎日毎日が、試行錯誤と創意工夫の連続だった
その中から中内は、のちのダイエーの基礎となる原理原則を生み出した
その一つは、客に学ぶ姿勢だった
たとえば、菓子の量り売りで200グラムを売る場合、最初に180グラム入れ、そこに少しずつ足していき、ほんの少しだが、秤の目盛りが200グラムを超えるぐらいのやり方にした
これだけでも客はかなり得した気分になる
気分よく帰ってもらえれば、その客はまた買いにきてくれる


中内㓛は、規制に守られ、既得権を持って威張っている連中をことごとく打ち負かし、既存の社会通念を破壊することに興味を抱いていた
そして、規制のない、自由で公平な競争のできる社会をつくることに、ある種のおもしろさを感じ、そこに力点を置いていた
既存の社会通念を破壊して、新しい秩序を構築することに自らの事業の目的を置いた
具体的に中内が目指したのは、メーカーの寡占支配体制を破壊し、疎外され、虐げられていた消費者を解放することであった


近年は年四回の会計基準で収益を
ださなければいけなくなっている
短期間での収益が求められているのである
むろん、収益を重視するのは悪いことではない
しかし、資本効率一辺倒、経営効率一辺倒の短期的収益重視の経営になってくると様々な弊害が現れるようにもなる

中内㓛は、経営効率一辺倒の収益至上主義ではなかった
注目すべきなのは、中内が目指した革命文化である
主婦のため、消費者のため、一般大衆のために世の中を根本から変えるのだ、との理想を追求しながら文化を創出し続けた一途なエネルギーである


この世を消費者のための社会にしたい
消費者がほしいものをほしい値段で買えるような社会にしたいこれが中内の革命論の出発だった
しかし、現実はどうか
日本では物の値段を決めるのに、コストがいくらかかるから売価をいくらにする、というコスト主義がまかりとおり、消費者の存在が無視されている
価格の決定権は流通支配権を有する生産者が持ち、生産者の一方的な押しつけ販売が横行している
日本の経済社会は、生産者がすべての面にわたって実権を握っている
いわば、生産者中心の社会であり、消費者がないがしろにされている消費者不在の社会なのであるこの点は、現在もなお、多くの面で変わったとは言えないだろう

戦後の混乱の最中にあって、中内は早くも「今こそ、消費者主権を確立させなければならない」と考えた
生産者が決定した価格を破壊し、これに代えて流通業者が消費者大衆のために価格を設定することで、生産者中心型社会を流通業者中心型の社会に改めるのだ、と
消費者が求めるバリュー(価値)を基礎に売価を設定するバリュー主義を貫徹する以外にない、と中内は考えた


1962年5月12日(昭和36年)、シカゴで全米スーパーマーケット25周年記念式典に参加した
中内が驚いたのは、ときの大統領ケネディからメッセージが届いたことだった
「アメリカとソ連の差は、スーパーマーケットで自由に商品を選べるか、配給を待って列を作るのかの差である。スーパーマーケットによるマス•マーチャンダイジング•メソッド(大量商品開発方式)こそが、アメリカの豊かな社会を支えている」
ケネディ大統領の自信溢れる言葉に、中内は自分の進むべき道を教えられた気がした


牛肉と並び、よく知られるのが、松下電器産業と製品の小売価格を巡って30年間にわたり係争した一件であった
その経緯はさておき、そもそも中内は松下幸之助個人のことは、人物として非常に尊敬していた
松下幸之助の事業経営に一貫しているのは、先を見る目である
戦後の家電業界は無限のように湧き出てくる需要を背景にして伸びてきたが、幸之助はその流れをいち早く見通していた
的確な判断のもとに他の部門を顧みることなく、弱電(家電)一本に絞った勇気と決断は他に類をみない
後発であるにも関わらず、弱電部門でシェア第一位を獲得する力は流石である
また、松下が日頃強調するPHP(繁栄によって平和と幸福を)の理念に異論はない
松下の「水道哲学」にしても、水道の水のように、手軽に、豊富に、世の中の人たちに家電製品を供給したいという理念は立派である
中内は松下を尊敬していた

中内「僕なんかでも、松下幸之助には経営者として足元にも及ばない。というのは、残念ながら学校を出ているからね。松下幸之助のように、小学校を四年で出ていたらもっと大成しただろう。井植歳男さんが常にこぼしていた。「松下幸之助のほうは小学校4年だ。僕のほうは高等小学校出だからちょっとかなわんな。学歴が邪魔して商売がなかなかできん」と。大学出は、仕事を守っていくことは出来ても、新しいものを創造していくことはなかなかできない。•••」


メーカーきらの風当たりが厳しくなったのは、1964年(昭和39年)の後半からだった
東京オリンピックによる好況から、五輪閉幕とともに一転して反動不況となり、「オリンピックをカラーテレビで」というブームにのってきた家電メーカーは、大量の在庫を抱えてあえぐようになってしまったのである
このとき松下電器は、系列の代理店や販売店に価格維持を徹底させた
松下の流通部門に対する系列化が激しくなってきたのは、1964年7月の熱海会談からである
それは、系列化と製品値上げを実行するための会談だった
「このときの松下幸之助の答えは、「販売店が儲からないのは安く売るからだ。儲けるには高く売ることだ。今後、高い水準に小売価格を設定するので、これを守りなさい。安売り店へは出荷を停止する」だった。ここには、生産者と販売店だけが利潤を追求する姿勢しか見られない。消費者への配慮はない」(わが安売り哲学)


松下電器がダイエーに対抗してからじつに30年後の1994年(平成6年)3月のことである
ダイエーだけで年間何百億円と家電製品を売り上げていた時代に松下電器はそれに乗る機会を逸し、巨額の損失を出した
そのうえ、最後は松下電器のほうが折れたのである


20110905日経ビジネス

20110905日経ビジネス


移民船第一号「笠戸丸」の出航から100年余り
日系人たちは苦難を乗り越え、ブラジルの農業•工業技術の発展に貢献をしてきました
戦前の移民には奴隷同然の扱いを受けた人が多く、お金を稼ぐどころか、借金が膨らむ人が続出しました
日本人は責任感が強く、その分、自殺者も多かったと聞きます
口べただけど、人を裏切らない
約束は守る
その後、日本人の信頼という財産は、同国に進出する日本企業にとって、後押しとなってきました
震災や円高進行を受けて、空洞化論議が熱を帯びています
こんなときに企業経営者が積極的な海外シフトの方針を打ち出せば、国を捨てるかのようにいわれる風潮があります
しかし、本当にそうでしょうか
震災後、多くの国から支援の申し出がありました
彼らが日頃、見ている日本人は、国内に住んでいる人ではなく、現地にいる人たちです
つまり海外に飛び出していった人たちが日本ブランドを向上させ、巡り巡って、日本の復興支援に一役買ったと見ることもできます
日本の経営者はもっと海外展開で成長することが国のためになると堂々と言ってよいと思います
戦前のブラジル移民は、言わば海外への出稼ぎの先駆者

■新浪剛史 ローソン社長
正直にいって個別政策において野田氏の考えと僕の考えで異なる部分もある
しかし、経済成長ファーストという大方針が一致しているのであれば、個別政策に対する小さな違いで政権を否定するようなことはやめたい
何か政策を進める際には、企業や国民の一部が痛みを感じることもでてくるだろう
うちとしてもあるかもしれない
しかしその痛みがやがてもたらされる経済成長のためであると納得し、実感できれば、その痛みには耐えようと思う
例えば消費税は上げればいい
5%でも10%でもいい
あるいは個人的には、国内に買い手がいる限りは国債をもっと発行したっていいと思う
ただ、その前提として経済成長か、またはその確信が欲しい、ということだ

TPP導入に対する考え方が、輸出産業関係者と農業関係者とで異なるのは当たり前だ
最初に述べた様に、政策を実行して何かを変えるときには、誰かが痛みを感じるものだ
だが、その痛みに耐えてもらってでも国家の大計として進めなければならないならば、リーダーにはそういうメッセージを発してほしい

■永守重信 日本電産社長
民主党政権は自民党政権よりも経済政策への経験が乏しく、知識がないのに、政治主導なる叫びの下で素人的な経済運営をしてきたといわざるをえない
現在の超円高や世界的に高すぎる法人税、厳しい労働規制などの放置が企業の競争力を大幅に低下させた
復興税と称して所得税や法人税を引き上げる増税策は、経営者の意欲を低下させるだけではなく、企業の国際競争力を低下させかねない
野田政権では経済状況が好転することはないとみている
今やるべきなのは、行政の無駄の削減に真剣に取り組むこと、直接税と間接税のバランスを取るためにも景気回復時には消費税をあげることを明言し、それを担保にした一時的な赤字国債発行で経済活性化を図ることだ
その意味で企業の国際競争力を回復させるための法人税率の引き下げは当然必要だろう
労働規制の緩和やTPPなどによる自由貿易も待ったなしである

■原田永幸 日本マクドナルドCEO
「成長なくして財政再建はない。財政再建なくして成長はない。」
五人の候補者の中で野田氏だけがこの点を明確に主張していた
将来の成長のための真の政策を語ろうとしていたと思う
日本の今後を語ろうとしていたと思う
日本の今後を真剣に考えている情熱を感じさせる人だ


2010年度の納税額の上位20社で、2010年度の海外売上高比率が7割以上の企業が、トヨタ自動車など6社ある
3〜5割の企業は7社
合計するとNTTなど海外売上高比率が10%未満で開示していない内需企業の数より多い
もちろん全額を日本で払っているわけではないので、海外に出なければ日本の税収はさらに増えるとの指摘もあるだろう
さらに、海外での納税額が日本を上回ったとしても、利益が国内に還流すれば、それは日本経済の活性化につながる
実際にそれが起きている
6兆3000億円、3兆1000億円
前者が2009年度の国の法人税収だ
リーマンショックのあおりで前の年度から4兆円近くも減った
2010年度は9兆円近くまで回復したが、それでも20兆円近くあったバブル経済崩壊前と比べるとほぼ半分の水準だ
一方の後者は、配当金の形で海外から国内に還流した利益
多くが日本企業の海外現地法人が現地で稼ぎ、日本本社に送金した額だ
2000年代前半は1兆円前後で推移していたが、ここ数年は法人税収の落ち込みと反比例する形で、右肩上がりで増えている
かつては海外で得た利益を国内に還流させる場合、日本の法人税率が課された
このためりえ現地での再投資にまわす比率が高かったが、2009年度税制改正で日本本社が現地法人などから配当金の形で受け取る収益の95%が非課税扱いとなった
これによって現地で再投資にまわるカネは大幅に減り、還流額が急増した

海外展開を加速するほど現地でそれを担う日本人社員が必要となるのは、どの産業にも当てはまる
開いた拠点の数だけ雇用も増える
もっとも、海外への本格進出を確実に雇用確保、雇用増に繋げるにはどうしても避けて通れない道がある
それは、日本人社員をグローバルで通用する人材に育て上げることだ

柳井社長は、日本を食べさせていくのは、グローバル化した企業とグローバル化した日本人と力説する
企業と人が両輪となって動き出せば、日本は空洞化の弊害を乗り越えられる


企業と人材の海外進出に加えて、個人金融資産が出稼ぎに動き始めた時、日本経済は新たな時代を迎える
海外での投資収益を最大化し、それが国内に還流することで日本全体が潤う、出稼ぎ立国の到来だ
そして、その際の指標となるのが、GNP(国民総生産)だ
GNPを見ても日本が世界第三位であることは変わらない
ただ、GDPでみた日本経済が人口減などの要因から成長余地が限られるのに対して、GNPには成長の可能性がある
そこに指標として再評価する理由がある
GDPにはモノやサービスの輸出から輸入を差し引いた純輸出は含まれるが、国内に還流した企業の海外利益は含まれない
同様に、金融機関や家計が海外に投資した証券投資収益も含まれていない
つまり、所得収支が含まれない
それは、これまで空洞化の恩恵として触れてきた要素が、カウントされないということを意味する
ところが、日本の場合は2005年以降、所得収支が貿易収支を一貫して上回っている
これは、GDPに含まれる純輸出より、GDPに含まれない海外からの純所得がより重要になったことを示唆している
日本はすでに貿易立国だった時代を終え、海外に投資して海外で稼ぐ出稼ぎ立国の時代を迎えていたわけだ
かつて最も重要だったGNPが、GDPにその座を譲り渡したのは1993年のこと
当時は海外での企業活動と国内景気の連動性が低く、GDPに海外からの純所得を上乗せしたGNPでは国内の景気動向を読み誤る恐れがあったためだ
しかし、経済のグローバル化が急速に進んだ今日、国内の経済活動だけを見ていては逆に経済の実力を過小評価することにもなりかねない
日本をGNPでみれば、空洞化こそが経済の牽引役となり得るということだ
企業も人もマネーも海外へその流れを止めることができないすれば、海外で儲けない手はない
GNPを増やす
日本の生きる道はそこにある

■花崎淑夫 ルミネ会長
桐生(群馬)の絹織物、尾州(愛知)の毛織物、北陸の合繊
日本では、こうした伝統的な繊維の産地が絶滅の危機に瀕しています
各社が安さを求めて中国に生産拠点を移した結果、現在では日本のアパレル商品の9割以上が中国で生産されています
アパレル各社は、日本国内の製造工場に仕事を依頼するときにも、中国と同じ条件を求める
これでは産地が疲弊するのも当然です
その点、欧米系の高級ブランドは日本のアパレル各社以上に、日本の産地を勉強しています
必要な素材はその良さを理解した上で、相応の価格で注文しているのですから

当然、小売業もお手伝いをすべきです
なぜこの価格なのか、どうやって作られたのかを説明して、お客様に満足して買ってもらう
今の消費者は、価値のある商品にはお金を払います
川中、川下が一体となって日本の繊維産地を支える
ファッション業界は今、転換期を迎えています

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20110829日経ビジネス

20110829日経ビジネス

■宇宙
欧米の市場規模は日本の比ではない
人工衛星やロケットなど宇宙機器産業だけ見ても日本が約2700億円であるのに対し、軍需があるアメリカで約4億円。欧州でも約8700億円ある
今のところ、こうした欧米マーケットに日本勢はほとんど食い込めていない
8兆円まで拡大した日本の宇宙産業だが、このまま内需頼みでは、頭打ちは免れない
だが、そんな状況も今後は変わっていく可能性が高い
欧米以上の成長性が期待される新興国需要の登場で、世界の宇宙産業の勢力図が大きく描き変わろうとしているからだ

■大沼伸治 鳴子温泉郷観光協会常任理事
東日本大震災の影響で、観光客は、昨年の同時期に比べておよそ四割減りました
もともと、観光客の減少傾向が続いており、震災はそこに、さらに追い打ちをかけた格好です

旅館やホテルが大型化し、サービスや料理も競いあった結果、代わり映えのしない温泉地が増え始めた
過剰な演出で投資額が増える一方、古くからのリピーターの足は遠ざかるという、悪循環から抜け出せないでいる

旅行に占める温泉の地位は下がっていっている気がします
温泉はあって当たり前で、他においしい地物の新鮮な魚などの料理や施設の充実さ、近隣に遊びや買い物のスポットが求められるようになってきました
私たちもこのような急速な環境の変化に合わせて変わろうと努めましたが、どうしても他者が作った流行の後追いになってしまいました

鳴子温泉の客は、バブル経済の余韻が残る91年に年間200万人を数えました
ところが昨年は約80万人
全盛期の半分以下です

大きなホテルの多くは、インドや韓国などの外資や大手資本に買われました
独自資本で生き残る大きなホテルはたった一つだけです

私たちは鳴子温泉郷の強みを見失っていたのかもしれません
今は原点に立ち返り、温泉にとって最大の魅力であり資産であるお湯を生かす方向に舵を切りました
鳴子温泉のお湯はオンリーワン
その特長を生かし、観光客の増加を狙っています

■ノリエリ•ルービニ
民間部門の過剰な債務とレバレッジにより発生した金融•経済危機が第二の世界大恐慌に発展しないようにと2008年秋以降、民間部門が抱える大規模な債務は公的部門に付け替えられてきた
だが、そのために多くの先進国の経済は回復が弱く、いまだ景気後退前の水準には達していない

各国政府は昨年までは、資産価格を上昇させ、景気を回復させるための対策を次々と打つことができた
財政刺激策、ゼロ金利政策、二度に渡る量的緩和策、不良再建の切り離し、そして金融機関の救済や流動性確保のために何兆ドルもの資金を投入してきた
すべての手を尽くした今、もはや対策を打とうにも弾切れだ
ユーロ圏及びイギリスでは、現在、緊縮財政が成長の足かせとなっている
アメリカにおいてさえ、州政府などの自治体に加えて、連邦政府までもが歳出削減を進め社会保障給付などの移転支出を削っている
各国は早晩、増税もするだろう
銀行をこれ以上救済することは政治的に不可能だし、経済的にも無理だ
各国政府、特に欧州はあまりに疲弊しており、銀行を救済する余力はない
まさに欧州各国のソブリンリスクがこれらの国の国債に対する信認を揺るがしており、ひいてはそうした国債の大半を保有する欧州の銀行の健全性に対する不安を増大させている
金融政策ももはやあてにはできない
ユーロ圏諸国及びイギリスではインフレ率が目標を上回っており、量的緩和をできる状況ではない

最近、中東からイスラエル、イギリスで頻発している市民デモや中国で高まっている民衆の怒りは、すべて同じ問題が原因だ
つまり、不平等、貧困、失業が拡大する一方で、希望がないという点だ

市場中心の経済が本来あるべき形で機能するには、市場と公共財といった社会資本への投資とのバランスを取り戻す必要がある
それは、自由放任主義とブードゥー経済学(1989〜93年までアメリカ大統領を務めたジョージ•ブッシュ氏が、小さな政府を求めて規制緩和を進めた経済政策レーガノミックス)というアングロサクソン型モデルからも、債務に依存した福祉国家という欧州大陸型モデルからも脱却することを意味する
いずれのモデルも破綻したのだ
適切なバランスの回復には、生産的なインフラ投資のための追加的刺激策などによる雇用創出が必要だ
同時により累進的な税制、短期的財政刺激策と中•長期的な財政規律、銀行の破綻を招く取り付け回避のための金融当局による最後の貸し手としての支援、破綻した家計や苦境にある金融業者の債務負担の軽減、暴走する金融システムに対するより厳格な監督と規制、大き過ぎて潰せない銀行や寡占状態にある金融機関の分割なども必要だ

■まつもとゆきひろ ruby開発者
私はフェイスブックが近い将来、グーグルをも凌駕するインターネットの覇者になるのではないかと思っている

勢いがあるのは、フェイスブックだ
コメント欄がブログにとってかわり、写真のアップロードや位置情報、ゲームもできる
これまで、外にあった情報が次々に内側に入ってくることで、フェイスブックによって構築されている空間が非常に増えてきている
成り立ちは異なる検索エンジンとSNS
だが、グーグルとフェイスブックが膨張するのに伴い、この境界線が薄れていくのではないかと思う
グーグルで検索しても、知りたい情報になかなか出会えずにもどかしい思いをした経験はだれしもあるだろう
これはグーグルがユーザのパーソナリティを無視したまま、原則として一義的に情報を検索し、誰がみても同じ答えが返ってくる仕組みになっているからだ
この点でフェイスブックは、グーグルを置き換えるまでには至っていないが、将来的にはこの弱点を補完する情報提供ツールになるのではないかと思う
フェイスブックは自分の友人など興味関心の近い人から輪が広まり、結果として自分にとって有益な情報があつまりやすい
将来、これが検索に生かされると、あなたに近い人による基準だとこんな順位づけになりますという結果が表示されるようになるかもしれない
お互いの領域を侵食しつつある両者だが、ソーシャルネットは規模が力であることから当面はフェイスブックに分があると思う
将来、どのサービスが勝者になろうとも、ネットの未来がソーシャルにあることだけは間違いないと強く感じている

20110815 日経ビジネス

20110815 日経ビジネス


コマツは販売した建機に取り付けた情報端末で、建機の稼働率を常時、監視している
その情報によると、5月に稼働率が前年同月より5%低下し、6月はさらに落ち込み14%の低下になった
稼働率の低下は、建機の需要が減少していることにほぼ等しい
コマツは4〜6月期の中国の建機売上高が前年同期比23%減の754億円にとどまった
前期比で10%の伸びと見ていた2012年3月期の中国市場の成長率は、5〜10%のマイナスへと下方修正した

■木瀬輝雄 TOTO会長 × 加藤嘉一 コラムニスト
加藤:
日本企業は、価格だけでは韓国や中国の企業にはなかなか勝てない
でも、僕は値段で勝ち負けをかんがえるのではなく、日本企業の特徴を考えるべきだと思うんです
木瀬:1979年に中国に進出し、94年には北京に合弁会社を設立して、市場展開を本格化しました
今では、全社売上高の6%を稼ぐほどになっています
その根底でかんがえ続けたのは、中国の企業が得意な領域に日本勢が参入して、市場を荒らす必要は全くないということでした
我々が狙っているのはハイエンドの消費者
数でいうと、中国人全体の10%、1億3000万人ぐらいです
商品やブランドを評価するのは消費者なので、社員には「中国の生活や文化の向上に貢献できる企業になって、中国に必要な存在であり続けないと意味がない」と常々言っています

日本で売れているモノが、必ずしも中国人にとって魅力的なわけではない
だから、基本的な技術開発の部隊などは日本に置きつつ、中国で好まれるデザインや型は現地で作ることが重要です
加藤:受け身の姿勢ではダメです
中国の人たちは、プライドが非常に高い
日本の自動車メーカーか家電メーカーは、日本で売れなくなった商品を中国に流しているのではと疑っている人がいまだに多い
反面、自分たち向けに開発してくれた商品となれば自尊心がくすぶられて財布のひもを緩めがちです

今ほど日本に有利な状況はないと思うんです
中国の人たちが現状に対して抱いている不満は、日本勢が過去に取り組んできた様々な課題と合致する
格差とか、社会保障とか、快適な住宅とか
特に、成長著しい内陸部ではこうした不満が顕著です
この先、日本企業は雇用や人材育成の面で、他の外資系企業とうまく差異化を図ることが重要だと思います
和の精神を持って、企業づくりをしていく
これが今、中国で最も不足していくことです
雇用の保障、社員教育の充実
企業活動を通じて、日本企業の価値観をうまく輸出していくことが大切ではないでしょうか
僕は、中国に進出した日本企業に重要なことは二つあると思っています
一つは、現地の人間にどれだけの責任と権限を与えられるか
もう一つは、チームワークの精神を維持しつつも、成果への対価をどう与えていくか
この2つを、中国の人たちのアイデンティティーや価値観に合う形で解決できるかどうかがカギでしょう

東日本大震災が起きたことで、まさに今、日本人としてどう国造りをしていくのかという明確なビジョンが問われていると思います
単に法人税が下がらないとか、日本企業が出ていってしまうといった議論をしても仕方がない
震災を経て、改めて日本人にとっての豊かさは何なのかを考えるそして、その答えに相応するよう制度を設計し、ビジネスもきちんと付随させる
これが勝利の方程式だと、僕は思うんです

■カルロス•ゴーン 日産自動車社長兼CEO
今は円ドルレートは78円
本当に衝撃を受けています
韓国や他の国は、自国の経済をサポートしています
日本は金融危機だけではなく、震災もあって円高もある
自国を危機にさらしているのは理解に苦しみます

今、日本に足りないものは、ビジョンです
あるべき姿を描いた計画が必要だとおもいます
日本の現場は世界のナンバーワンです
経済規模では世界トップ3の大国です
ビジョンの欠如が問題なのです
企業が海外で発展することによって、日本もまた活性化します
海外市場で自動車が売れることは、日本を守ることと同じで、日本の発展に寄与するのです
私たちは産業界として、海外での成功がなぜ日本のためになるのかをもっと説明しなければなりません

■アジア少子化
親と同居、または近所に住んでいることが多い香港の子育て世帯は支援にめぐまれている
加えて、毎月四万円程度できる外国人ヘルパーに世話を任せるのも一般的
夫婦共働きが当たり前で、ビジネスの世界での女性の存在感は大きい
出産や子育てによるキャリア上の不利益もほとんどないようだ
しかし、その合計特殊出生率は1.04(2009年)と極めて低く、同じ年に1.37だった日本を大幅に下回る
台湾も深刻だ
2010年の合計特殊出生率は0.91と過去最低水準となった
そのほか、シンガポールの1.16など、日本より少子化が進んでいる国があることがわかる
一般的には人口維持には、2.08以上の合計特殊出生率が必要だとされる


20110801日経ビジネス

20110801日経ビジネス

■西松屋チェーン
繁盛店は作らない
人のいない店内に無骨なレイアウト、BGMも流れず、レジには店員がぽつんと一人立つ
そんな味も素っ気もない閑散とした店こそ、同社が目指す店舗だ
子育てと家事に忙しい子連れ客にとっては、店内の混雑や長蛇の列はストレスにしかならない
このため、出店立地も来店客が混みあわない場所をあえて選ぶ
仮に店が繁盛し始めれば、近くに新たな店を構えて、混雑の分散化を図る徹底ぶりだ
同社は、店舗の簡素化を追求
無駄な装飾をなくし、ベビーカーでも買い物しやすいように通路はなるべく広く設計するのが基本だ
シンプルな店づくりを心がければ、その分、安さを追求することもできる

■原田泳幸 日本マクドナルドホールディングスCEO
組織というのは、常に変化しないとダメになると思います
僕の持論は、同じ人が同じポジションで同じ仕事を三年以上やっているともうダメです
組織の陳腐化は業績の低迷に繋がります
僕の経営チームのメンバーは常に動かし続けます
僕自身もかわれなくなったらこの席にはいられません
七年間、この会社で経営を担っていますが、僕は毎年違うことをやっている自負があります
例えば、就任当時の僕がすべきことは、戦略の方向性を示すことでした
基礎体力を取り戻し、客数と客単価をあげるための道筋を示しました
もうその段階は終わりました
今のテーマは人材教育です
クルーを含めた従業員たちにとって働きがいのある職場を作ることは、ビジネスを成長させるためにももっとも大切な投資です
女性ももっと活用したい
管理職の女性比率をなるべく早く50対50まで持っていきます
なぜ女性か
当たり前の話じゃないですか
人口比率がほぼ同じで、でも管理職比率は大きな差がある
潜在的な才能は男と女どっちに多いかって、女性のほうに多いに決まってます

これまでいろいろなことをお話ししてきました
まっすぐに歩いてきたように聞こえたかもしれません
でも、僕は成功の10倍は失敗しています
僕に言わせれば、経営者は朝令暮改でいい
やってみて検証すればいいし、その結果、間違っていたら変えればいい
もっと乱暴な言い方をすれば、間違えていてもなるほどと思わせるぐらいの勢いでいってのければいいんです
間違えていても信じさせる力、これがリーダーシップです
でも、同時にゴルフコーチのように客観的に自分を見つめる外の目も必要です
冷静な論理と、熱い情熱
組織だけじゃなく、経済者自身にも両方とも欠かせないと思っています

■加藤英則 パチンコチェーンストア協会代表理事
(かつて30兆円市場と言われたパチンコ業界も、ここ10年で市場規模は縮小を続け、21兆円程度に落ち込んだ)

まず、パチンコホールの淘汰が一層進んでいます
ホールの数は、2000年の17000店から2010年は12000店にまで減少しました
2008年の金融危機以降は、その勢いに拍車がかかっています
個人的には、20兆円を切るのは時間の問題だと見ています

パチンコの利用者は、ピークの約3000万人から現在は1700万人程度に減ってしまいました
最近実感するのはホールに来店されるお客様がどんどん高齢化している点です
一方で、若年層は明らかに減っています
彼らは人口が減っている以前にパチンコをやらないのでしょう

個人的には、今後パチンコはホールは、高齢者の集まるサロンのような場所になっていくだろうと考えています
地方でも、近隣のつながりという点で希薄になっていますから、パチンコホールがそういう穴を埋める存在になればと思っています
パチンコをしなくても単に顔を見にくるだけでもいい
あまり知られていませんが、今回の東日本大震災の被災地では、パチンコホールが重宝されました
避難所から離れてプライベートを確保できる、一種の集合所のような場所になっている面もあったんです
今後、ホール経営もそういった場作りの要素が重要になっていくのではないかと思います
逆に言えば、新機種を次々と投入して短期的に収益を稼ぐような現在のモデルは永続しないと思います
パチンコ業界も明らかに時代は変わっているのです
いろいろと批判はあると思いますが、私たちにもそういった役割があることは知っていただきたいし、我々もそれを自覚して事業を続けたいと思っています

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