■20120521日経ビジネス
■ヤクルト
ヤクルト本社は、グループとして全国に109の販売会社を持つ
その販社がヤクルトレディと呼ばれる販売員を抱える
人海戦術による販売網がヤクルトの営業力を支えている
歴史を遡れば、ヤクルトは戦前に各地域で販社が創業し、その後に商標権管理や広告宣伝を目的として、ヤクルト本社が設置されている
1955年に本社がスタート
67年に「中興の祖」と言われる故•松園尚己氏が、長崎ヤクルトのトップから本社社長に就任
販売網を磨き上げ、80年には株式上場に導いている
当時は、本社経営陣にも地方販社のオーナーがずらりと並んでいた
グループの離反が広まっている
その謎を解くカギが、本社の好業績にある
高い利益率を維持し続けている背景には、ヤクルトレディを基盤とした強い営業力を持つ販社の存在がある
だが、販社の経営状況は厳しく、毎年のように経営に行き詰まる販社があり、整理統合されてきた
「本社だけが安定した利益率を維持しているのは、商品の販社への卸値をあげて、利益を吸い上げているからだ」
ある販社のトップは、本社の商品戦略に多くの販社が苦しんでいると憤る(いきどおる)
「魅力的な商品が出てこない」
販社にはそうした不満がうずまいている
現場の販売力でヤクルト本社は好業績を上げながら、90年代から利益を浪費する事件を続けざまに起こした
98年にはデリバティブで1000億円を超える損失
2000年以降も右翼の大物、西山広喜氏が社長だった企業との取引が発覚するなど、世間を騒がせた
だが、1996年に社長に就任した堀澄也氏(現会長)は、17年間にわたって、代表権を握り続けている
堀会長は、ヤクルト本社初の「本社入社組の経営トップ」となった
そして、徐々に販社出身者が役員から外され、今では常勤取締役から消えている
販社がダノン側につく背景には、「敵の敵は味方」という構図がある
■日立
目には見えないが、内向きだった社内風土を外部に目を向けさせる仕組みが機能している
カンパニー制と社内格付けの仕組みだ
社内の事業を6つのカンパニーに分けて、それぞれを独立した会社のように運営し採算管理を明確にする
さらにその下のビジネスユニットという事業単位には社内格付けを付与する
純資産と負債の割合など財務体質や利益率などで格付けを決め、ユニットに伝える
格付けが低ければ本社の経営会議に定期的に事業状況を報告する必要があり、設備投資も本社の承諾が必要だ
高ければ経営会議への報告義務もなく、投資の自由度が高まる
かくして好調な部門ほど、丸の内の本社から離れていくことになった
この制度で経営のスピードは格段に上がった
本社部門はグループ全体のコスト削減策や経営改革に集中し、事業上の判断は現場で決定する
■平井一夫 ソニー社長兼CEO
まず固定費を下げる、それから売り上げを伸ばすために商品力を強化する
基本的にやらなくてはいけないのはこれだけです
私は仕事でのフラストレーションを仕事で発散させるということは絶対にやりたくないし、しません
仕事のオンオフははっきりさせます
週末もメールを読んでいるときりがないので、外出する場合は携帯電話だけ
スマートフォンは持っていきません
デジタルイメージングの分野はソニーの将来にとって非常に重要です
圧倒的な優位性をさらに強固にするために、現状より多くの経営資源を投入して、もっと強くする
問:
よく質問されると思いますが、アップルがiPodやiPhoneのような商品を生み出せたのに、なぜソニーはできなかったのでしょうか
答:
デシジョンメーキングに問題があったんじゃないかとおもいます
具体的にいうと、ネットワークを介して音楽を楽しむ
コンテンツをダウンロードしてもらうビジネスモデルや商品はソニーにもあったわけです
でも、それぞれの事業ユニットが、自分たちなりの考え方を持っている中で、各ユニットをまたぐようなビジネスに取り込もうとなると、意見調整などに時間がかかってしまった
商品軸というよりも、「できること軸」で物事を考えることが大事になる
今後は特にモバイル領域で新たな体験を提供していくことが重要だと考えていて深掘りします
■ジョージ•ソロス
欧州統合のプロセスは戦後、非常に長期的な視点を持った少数の指導者が先頭に立って始まった
彼らはその実現が用意ではないことを知っていたので、しっかりとした政治的意思は持ちつつも、限られた目的で一歩ずつ前進する道を選んだ
その過程で問題が判明したら、解決しながら前進すればよいと考えた
こうして欧州石炭鉄鋼共同体が、少しずつ前進しながらEUへと発展を遂げた
ドイツはこの過程で常に最前線にたってきた
ソ連が崩壊し始めた時、ドイツのリーダーたちは東西ドイツの統一は欧州がさらに統合して始めて可能になるとわかっていたので膨大な犠牲を払うことを厭わなかった
経済的な問題が浮上すれば、ドイツは常に他国より多くを負担し、リターンは他国ほど求めず、他国と譲り合いつつ様々な合意にこぎ着けた
当時、ドイツの政治家は「ドイツに独立した外交政策はない。欧州の外交政策があるだけだ」とよく主張していた
かくしてマーストリヒト条約が成立し、ユーロ導入も実現した
ただ、残念なことにその後、経済が停滞し、2008年には金融危機が発生した
以来、事態はユーロ崩壊へのプロセスへと変質していった
私は今回のユーロ危機は、EUそのものの存在をダメにする可能性があると見ている
崩壊に向けた最初のステップは、リーマンブラザーズが破綻した直後にメルケル独首相がこう言い放った時に始まった
「金融危機に対する保証は、欧州が一体となって行うのではなく、各国政府でそれぞれ行うべきだ」
ドイツの姿勢が明らかに変わった瞬間だった
マーストリヒト条約には作った人たちも気づいていなかった欠陥があった
それらの欠陥の全容はいまだに理解されていないが、一つは「ユーロが失敗するかもしれない」ということを念頭に置いていなかった点だ
その証拠にユーロ加盟国に対し「(財政規律などの)ルールを守らなかった場合、強制的に従わせる方法」も「ユーロから離脱する方法」も、「加盟国が通貨を刷る(=金融緩和を図る方法)」も決めていない
失敗するかもしれないことを念頭においていれば、強制条項や離脱の条件をあらかじめ決めていたはずだ
ドイツ中央銀行は民間銀行の融資絞り始めている
だが、ギリシャなど債務過剰国が景気を回復するにはドイツの強い需要が不可欠だ
ドイツの強い需要がなければ、昨年末に合意し、今年3月に25カ国が署名したユーロ圏の財政規律を強化する協定も機能しない
過剰債務国は必要な政策を実施できないか、実行できても目標達成は難しく政府債務のGDP比は上昇し、ドイツとの競争力格差は一層拡大することになる
ユーロが存続し得るかは別にして、欧州は長らく経済の停滞から抜け出せないだろう
1980年代の南米や日本は長期停滞にもかかわらず、今も存続している
だがEUは国ではない
それだけに債務国がデフレによる債務の罠に陥れば、まだ完成途上にある政治結合体であるEUは崩壊し、シェンゲン協定も消え去る可能性は十分ある
これは大変な悲劇だ
欧州は現在、打つ手がないからEUを続けているだけだ
それではお互いが協調する体制にはつながらない
現状を反転させるには、誰もがそのために努力したくなるような夢を持つべきだ
EUは本来「素晴らしい夢だった」はずだ
それはまさに、哲学者カール•ポッパーが提唱してきた「オープンソサエティー(開かれた社会)」を実現するという意味だ
開かれた社会とは、異なった考え方や利害を抱えた成員同士が平和的に共存することを可能にする制度が必要だと認めるような社会だ
そこでは人権と民主主義を守り、どこか一カ国が支配的な立場に立ったりはしない
その意味で、EUは世界がお手本にできるようなオープンソサエティーになり得るはずである
そうした理想のEUに戻るため、当局はまず自分のミスを認めて正す必要がある
最近のメルケル首相にはそうした変化の兆しが見られる
■ヤクルト
ヤクルト本社は、グループとして全国に109の販売会社を持つ
その販社がヤクルトレディと呼ばれる販売員を抱える
人海戦術による販売網がヤクルトの営業力を支えている
歴史を遡れば、ヤクルトは戦前に各地域で販社が創業し、その後に商標権管理や広告宣伝を目的として、ヤクルト本社が設置されている
1955年に本社がスタート
67年に「中興の祖」と言われる故•松園尚己氏が、長崎ヤクルトのトップから本社社長に就任
販売網を磨き上げ、80年には株式上場に導いている
当時は、本社経営陣にも地方販社のオーナーがずらりと並んでいた
グループの離反が広まっている
その謎を解くカギが、本社の好業績にある
高い利益率を維持し続けている背景には、ヤクルトレディを基盤とした強い営業力を持つ販社の存在がある
だが、販社の経営状況は厳しく、毎年のように経営に行き詰まる販社があり、整理統合されてきた
「本社だけが安定した利益率を維持しているのは、商品の販社への卸値をあげて、利益を吸い上げているからだ」
ある販社のトップは、本社の商品戦略に多くの販社が苦しんでいると憤る(いきどおる)
「魅力的な商品が出てこない」
販社にはそうした不満がうずまいている
現場の販売力でヤクルト本社は好業績を上げながら、90年代から利益を浪費する事件を続けざまに起こした
98年にはデリバティブで1000億円を超える損失
2000年以降も右翼の大物、西山広喜氏が社長だった企業との取引が発覚するなど、世間を騒がせた
だが、1996年に社長に就任した堀澄也氏(現会長)は、17年間にわたって、代表権を握り続けている
堀会長は、ヤクルト本社初の「本社入社組の経営トップ」となった
そして、徐々に販社出身者が役員から外され、今では常勤取締役から消えている
販社がダノン側につく背景には、「敵の敵は味方」という構図がある
■日立
目には見えないが、内向きだった社内風土を外部に目を向けさせる仕組みが機能している
カンパニー制と社内格付けの仕組みだ
社内の事業を6つのカンパニーに分けて、それぞれを独立した会社のように運営し採算管理を明確にする
さらにその下のビジネスユニットという事業単位には社内格付けを付与する
純資産と負債の割合など財務体質や利益率などで格付けを決め、ユニットに伝える
格付けが低ければ本社の経営会議に定期的に事業状況を報告する必要があり、設備投資も本社の承諾が必要だ
高ければ経営会議への報告義務もなく、投資の自由度が高まる
かくして好調な部門ほど、丸の内の本社から離れていくことになった
この制度で経営のスピードは格段に上がった
本社部門はグループ全体のコスト削減策や経営改革に集中し、事業上の判断は現場で決定する
■平井一夫 ソニー社長兼CEO
まず固定費を下げる、それから売り上げを伸ばすために商品力を強化する
基本的にやらなくてはいけないのはこれだけです
私は仕事でのフラストレーションを仕事で発散させるということは絶対にやりたくないし、しません
仕事のオンオフははっきりさせます
週末もメールを読んでいるときりがないので、外出する場合は携帯電話だけ
スマートフォンは持っていきません
デジタルイメージングの分野はソニーの将来にとって非常に重要です
圧倒的な優位性をさらに強固にするために、現状より多くの経営資源を投入して、もっと強くする
問:
よく質問されると思いますが、アップルがiPodやiPhoneのような商品を生み出せたのに、なぜソニーはできなかったのでしょうか
答:
デシジョンメーキングに問題があったんじゃないかとおもいます
具体的にいうと、ネットワークを介して音楽を楽しむ
コンテンツをダウンロードしてもらうビジネスモデルや商品はソニーにもあったわけです
でも、それぞれの事業ユニットが、自分たちなりの考え方を持っている中で、各ユニットをまたぐようなビジネスに取り込もうとなると、意見調整などに時間がかかってしまった
商品軸というよりも、「できること軸」で物事を考えることが大事になる
今後は特にモバイル領域で新たな体験を提供していくことが重要だと考えていて深掘りします
■ジョージ•ソロス
欧州統合のプロセスは戦後、非常に長期的な視点を持った少数の指導者が先頭に立って始まった
彼らはその実現が用意ではないことを知っていたので、しっかりとした政治的意思は持ちつつも、限られた目的で一歩ずつ前進する道を選んだ
その過程で問題が判明したら、解決しながら前進すればよいと考えた
こうして欧州石炭鉄鋼共同体が、少しずつ前進しながらEUへと発展を遂げた
ドイツはこの過程で常に最前線にたってきた
ソ連が崩壊し始めた時、ドイツのリーダーたちは東西ドイツの統一は欧州がさらに統合して始めて可能になるとわかっていたので膨大な犠牲を払うことを厭わなかった
経済的な問題が浮上すれば、ドイツは常に他国より多くを負担し、リターンは他国ほど求めず、他国と譲り合いつつ様々な合意にこぎ着けた
当時、ドイツの政治家は「ドイツに独立した外交政策はない。欧州の外交政策があるだけだ」とよく主張していた
かくしてマーストリヒト条約が成立し、ユーロ導入も実現した
ただ、残念なことにその後、経済が停滞し、2008年には金融危機が発生した
以来、事態はユーロ崩壊へのプロセスへと変質していった
私は今回のユーロ危機は、EUそのものの存在をダメにする可能性があると見ている
崩壊に向けた最初のステップは、リーマンブラザーズが破綻した直後にメルケル独首相がこう言い放った時に始まった
「金融危機に対する保証は、欧州が一体となって行うのではなく、各国政府でそれぞれ行うべきだ」
ドイツの姿勢が明らかに変わった瞬間だった
マーストリヒト条約には作った人たちも気づいていなかった欠陥があった
それらの欠陥の全容はいまだに理解されていないが、一つは「ユーロが失敗するかもしれない」ということを念頭に置いていなかった点だ
その証拠にユーロ加盟国に対し「(財政規律などの)ルールを守らなかった場合、強制的に従わせる方法」も「ユーロから離脱する方法」も、「加盟国が通貨を刷る(=金融緩和を図る方法)」も決めていない
失敗するかもしれないことを念頭においていれば、強制条項や離脱の条件をあらかじめ決めていたはずだ
ドイツ中央銀行は民間銀行の融資絞り始めている
だが、ギリシャなど債務過剰国が景気を回復するにはドイツの強い需要が不可欠だ
ドイツの強い需要がなければ、昨年末に合意し、今年3月に25カ国が署名したユーロ圏の財政規律を強化する協定も機能しない
過剰債務国は必要な政策を実施できないか、実行できても目標達成は難しく政府債務のGDP比は上昇し、ドイツとの競争力格差は一層拡大することになる
ユーロが存続し得るかは別にして、欧州は長らく経済の停滞から抜け出せないだろう
1980年代の南米や日本は長期停滞にもかかわらず、今も存続している
だがEUは国ではない
それだけに債務国がデフレによる債務の罠に陥れば、まだ完成途上にある政治結合体であるEUは崩壊し、シェンゲン協定も消え去る可能性は十分ある
これは大変な悲劇だ
欧州は現在、打つ手がないからEUを続けているだけだ
それではお互いが協調する体制にはつながらない
現状を反転させるには、誰もがそのために努力したくなるような夢を持つべきだ
EUは本来「素晴らしい夢だった」はずだ
それはまさに、哲学者カール•ポッパーが提唱してきた「オープンソサエティー(開かれた社会)」を実現するという意味だ
開かれた社会とは、異なった考え方や利害を抱えた成員同士が平和的に共存することを可能にする制度が必要だと認めるような社会だ
そこでは人権と民主主義を守り、どこか一カ国が支配的な立場に立ったりはしない
その意味で、EUは世界がお手本にできるようなオープンソサエティーになり得るはずである
そうした理想のEUに戻るため、当局はまず自分のミスを認めて正す必要がある
最近のメルケル首相にはそうした変化の兆しが見られる