2013年09月

大きく、しぶとく、考え抜く 原田泳幸

■大きく、しぶとく、考え抜く 原田泳幸


8年前の2004年に私がマクドナルドに入社した時は、7年連続既存店売上高マイナスという会社全体が針路を見失っていた時代でした
そうした中で私が行ったのは、進むべき方向を示したことです
本来の姿をもう一回見つめ直し、それを軸足に「マクドナルドの強さをもう一度回復させる」、ただその一点だけでした
そして、ひとつひとつ新しい改革を進めていったのです
改革は大きく2つに分けることができます
ひとつは業界で誰も行ったことがない新しい施策を実行すること
例えば、地域別価格、100円マック、24時間営業などです
「非常識なことを常識にしてやろう」、そういったチャレンジでした
もう一つは経営構造改革です
「戦略的閉店」と称して、目先の売り上げの500億円を犠牲にしてでも433店舗を閉鎖し、さらなる成長のために身を削る思いで基礎体力をもう一度付け直しました
直営店を減らし、フランチャイズを増やす施策などは、全員がハッピーになれる改革ではありません
しかし、改革しなければ全員が不幸になる、そういった思いで過去の経営の負の遺産に対して構造改革を推進しました

これからマクドナルドが継続的に成長するためには、どうしても後継者づくり、人材のパイプラインが必要です
先に述べた「基本に戻る」「新しい試みをする」「構造改革」は、私のリーダーシップでこれまで強引に引っ張ってくることが出来ました
今後は、私が「こっちへ行こう」と言わなくても自分たちでビジネスを成長させられる、つまり後継者にビジネスの舵取りをさせることが、今の私の一番大きなチャレンジであり課題です

私がリーダーシップを取れば、まだまだ成長できることはたくさんあります
しかし、構造改革というのは常に次に向けて自ら変化することであり、一回やったらそれで終わるものではありません
構造改革は終わりなき改革です

確かに、何かを達成するためには知識とお金が必要とされる時もあります
今、世の中の仕組みは人材や経営者などを評価する時も、知識やお金をどれだけ持っているかで評価する傾向にあると感じています
しかし、そのような基準で周りから評価された結果をもとに、自分を評価してしまうような勘違いをしているのではないかと危惧しています
本来、知識やお金は手段です

自分の人生を振り返ったり、様々な人材を見たりしてきた中で、「人間にとって一番必要な力とは何なのだろうか」と考えてみると、それはやはり「人間力」だとおもいます
人間力とは、まず人から愛されること、信頼されること、そして人と人との協調性を大切にすること、物質的な価値観ではなく、精神的な価値観をきちんと持っていることだと思うのです

常に成長の土台をつくる商品というのは必要です

「マクドナルドは、高価格帯商品を追求していると見られているのではないか」との疑問がありました
マクドナルドの最大の価値は2つ、お得感を示す「バリュー・フォー・マネー」と、徹底して利便性を追求する「スーパー・コンビニエンス」です
これに向かってビジネスモデルを7年ぶりにつくり直そうとしたわけです

プランに対して未達だから、ビジネスが上手くいっていないというのはやや単純な発想で、大きな流れで数字を見極める必要があります
例えば、4月の日本マクドナルドの既存店売上高をみると、前年同月比3.6%減です
ただ、それだけで業績が悪化していると見ると、これまでの経営改革の成果を見落とすことになります
最近当社では収益性の高い大型店舗を各地で出店しています
当然、利用者の多くはこの店にシフトしますよね
その結果、大型店舗が入っていない地域の既存店売り上げは落ちるわけです
改革のために進めてきた店舗の大型化というファクターを考えず、改革前と同じ構図で計算してプラスだ、マイナスだと一喜一憂している
これでは、本当に見なければいけないところを見ていないのです

「データだけにとらわれるな」とは、口を酸っぱくして話しています
みんな点数だけで思考しているわけです
データを見ているだけでは、良くなったか悪くなったかは誰にも分かりません
もっときめ細かくデータを読み込んで、現在のマクドナルドのサービスについて評価しなければなりません
これは思考停止していることを意味します
そういう管理項目について、外資系企業は世界のどこでもKPIを使います
つまり数値管理をするわけです
ですが、それをやりすぎると、みんなが思考停止してしまうのです
数値が目的になってしまうからです

数値というのは、あくまでも自己診断のためであって、自分がナビゲーションするための客観的データに過ぎません
最終目的はKPIの数値ではなく、売り上げです
売り上げを上げていくためにこのKPIをどう使うのか、という思考が大事なわけです

マネジメントというのは、アセスメント(評価)とコーチングの両方が必要です
大抵、評価することばかりに気を取られる人が多いですが、むしろコーチングのほうが大事です
コーチングをしている情熱が部下に伝わってはじめて、評価も聞き入れてくれます
コーチングもサポートもしないで「ただ君は何点だ、彼よりも何点いい」などというだけではダメです
評価だけのマネジメントなどは、外部企業に任せてしまえばできます

データというのは見方や使い方次第です
ところが、大半の人は結果データの解析しかしないので、真の原因が分からない

とにかく、状況が変わっても同じ物差しで人は考えがちです
サイエンス(科学)的な合理性だけでは難問は解けません
やはり人がどんなことを考え、どう行動するのか、サイコロジー(心理学)が欠かせません
成功は、思考停止を招きますね

人も企業も常にハングリーでないと、成長しませんよね
中国や韓国にはまだそんな勢いがあります
今、元気なサントリーホールディングスが、キリンビールやアサヒビールが強い時代にビール事業に進出した心境が少し分かります
企業力を高めるためだったのでしょう

現場のやる気をうんと引き出すには、こちらの情熱が大切なのです
マクドナルドは、やはりピープル・ビジネスが原点です
理屈やサイエンスではありません
現場のやる気が最大の武器です

最近のことですが、とんがった社員が退職してしまいました
確かに常識ある管理職から見ると、「もうあいつはクビだ」という感じの人間でしたが、私は常にそういうタイプをキープするようにしていました
型にはまらない発想を求めてのことです
しかし、成功していくと、だんだんマネジメント・リスクをとらず、安全に安全にいこうという方向に進んでしまいます
ですから、とんがった人間ははみ出してしまうようになり、辞める結果になったような気がします

会社には常に不満分子が存在します
この不満分子をどのように扱うかによって、集団として会社の性格が決定されます
やっかいな存在ですが、不満分子を排除せずにいかにうまく使うかが鍵になります
不満分子には個性的な人物も多く、もう少し増やす必要があります
そうしないと組織が利口になり過ぎる
ただそのコントロールは難しいです
不満分子を放置しておくと、必ず他にも不満分子をつくろうとするからです


マクドナルドのコーヒー国内シェアは、近年力を入れているチキンよりも高いのです
なぜかというと、コーヒーは一般的に摂取頻度が高く、マクドナルドの店舗シェアがコーヒーチェーンよりはるかに高いからです
私は、「なぜ、このコーヒーのマーケットシェアと相乗効果を出すようなマーケティング戦略がないのか」と言っています
すなわち、バリューセットやコンビなどがありますが、これだけでいいのか
値上げとか値下げだけではなく、経営の資産であるコーヒーのシェアとどう連動させるか、どうドライブスルーの機能と連動させるか、そこの店舗開発の投資とマーケティングの投資との連動がないのです

マクドナルドはピープル・ビジネスです
人を育てることが最も重要な経営だと確信しています


ビジネスとはマーケットをつくること
外食産業の場合、安売り戦争が中心です
「売る」のではなくて、そこに存在するお客様の需要をローコストで隣から「奪う」という競争になっています
それはマーケットをつくっているわけではありません
では、どうやってつくるのか
広告宣伝を使って商品の需要を喚起するのではなく、お客様にとって、今まで経験したことのない価値を提供するという視点がなければいけません

経営というのは、すべての相反する要素をみたそうとする矛盾を追いかけることです
矛盾だらけの中で経営しているわけです
例えば、顧客満足度を上げようと思ったら、店舗にクルーをたくさんいれることで、確実に上がります
しかし、クルーを多くしたらその分、利益を圧迫しますね
一方で、利益を上げようとすると満足度が下がります
「では、どちらをとりますか」という質問をよく受けますが、その時は「両方とれ」と言います
両方取ることがビジネスなのです
同時に取れないから、双方のバランスを取りながら誘導していくのです
客単価と客数のバランスもそうです


采配 落合博満3

■采配 落合博満3


数年にわたって実績を残しているレギュラークラスの選手からは、慣れによる停滞をのりのぞかなければいけない

慣れている安定感を前面に出すか、慣れによる停滞を取り除くか
組織を活性化するための配置転換は難しいものだし、すぐに結果が出るとは限らない
だからこそ、指揮官はしっかりと判断し、実行したのならば最後まで責任を取るべきだろう


絶対的なレギュラーは、監督やコーチが決めるものではない
春季キャンプから選手同士が必死に競い合い、誰の目から見てもレギュラーという存在が決まる
レギュラー争いの決着は、選手同士でつけるものなのだ

人を使うということは、経験を重んじるとか若手を信用してやるとか、そんな簡単な言葉で片付けられるものではない
少なくともドラゴンズのレギュラーは、厳しい競争を勝ち抜いてレギュラーになり、高い実績を残し続けている者ばかりだ
経験や信頼というよりも、「誰が見ても、お前があいつを抜き去った」という答えを出してもらうしかない
もう一度書いておく
その答えは私やコーチの主観的判断ではなく、選手同士で出すのである

「どうして監督は外国人なんか獲るんだよ」
そう思っている選手がほとんどかもしれない
私はこう答える
「お前たちが去年の競争で答えを出せなかったからだよ。競争あいてはどんどん増えていくんだよ」
2011年のシーズンは、そうした私の考え方を、ようやく選手たちも理解したようである
前年以上に目の色を変えてプレーしているのに加え、自分は何を求められているのかを、自分たち自身で考えられるようになってきた

必死に這い上がってきた選手は強い
レギュラーになっても安泰だと思わず、控えに甘んじている若手選手よりも自分の体を鍛え抜き、絶対にレギュラーの座を明け渡すものかとプレーするのだ
私の仕事は、それをじっくりと観察し、力を発揮できそうな場面で起用してやることだ
必死に競争した選手は心身ともにタフだ
そんな選手の多いチームが厳しい戦いを制するのだと思う
私たち指導者は、その競争を邪魔しなければいいのだ


データとはあくまで参考にするものであり、それを信頼し切ったのではデータに翻弄されるだけだ
大切なのは、どれだけデータを持っているかではなく、自分自身がどれだけのデータを含めた分析力を備えているかだろう

黙々とデータに目を通している選手が一流になるのではなく、実際に対戦した印象を自分なりに整理し、「こういう場面ならこうしよう」と自分の方法論を確立しておく選手が、成績を残していくのである


球団の財産は選手だ
ならば、どんなことをしてでも選手を守らなければいけない
企業経営者と話をしても、常に考えているのは「どうやって利益を上げようか」ではなく、「いかに社員とその家族の生活を守っていくか」である
その目的を達成するためなら、自分は嫌われたって恨まれたって構わない
それが監督を引き受けた時の覚悟であり、チームを指揮している間、第一に考えていたことである



チームリーダーと言われている選手に敬意を表し、「あの人についていけば」とか「あの人を中心」といった発言をするが、それが勝負のかかった場面での依存心になってしまうケースが多い
「僕はあの人のようにはなれません」などと謙遜しているのを見ると、厳しい勝負の世界で生きていけるのだろうかと老婆心が覗いてしまう
「あの人のようになろう」と努力を続けて一人前になっていくものだろう
そして、いつかは先輩の背中を追い越していく
チームリーダーという存在によって、競争心や自立心が奪われていくことは、組織においてはリスク以外の何物でもない
気づけば全員そのまま歳を取ってしまっていたでは、チームにも選手一人一人にとっても、取り返しがつかないことになる
組織に必要なのはチームリーダーではなく、個々の自立心と競争心、そこから生まれる闘志ではないか
年齢、性別に関係なく、メンバーの一人一人が自立心を持ち、しっかりと行動できることが強固な組織力を築いていく
つまり、一人一人が自分なりのリーダーシップを備えていれば、チームリーダーなる存在は必要ないと考えている



今の若い選手に教えておかなければならないのは、「自分を大成させてくれるのは自分しかいない」ということだ

自分で自分を成長させた選手がレギュラーの座を手にしていくのだ


「自分から練習に打ち込んでいる間は、オーバーワークだと感じても絶対にストップをかけるな」
極論すれば、その時のオーバーワークが引き金となって潰れてしまってもいいと考えている
「これ以上練習させたら壊れてしまう」と指導者が気を遣っても、一軍で活躍することができなければ、結果として壊れたのと一緒だろう

厳しい競争は自然にチームを活性化させる
だからこそ、選手たちが自己成長できるような環境を整え、そのプロセスをしっかり見ていることが指導者の役割なのだと思う


毎試合勝ちにいく
こういう戦いを続けていると選手は確実に疲弊してしまう

今日は負けても翌日に戦う力、勝てるチャンスを残すべきではないか
それがペナントレースというマラソンのような戦いで、最終的に一位でゴールするために必要だと思う
とにかくどんなに強いチームでも50試合は負けるのだから

監督が常に考えておくべきなのは、「負けるにしても、どこにチャンスを残して負けるか」ということなのだ

組織を預かるものの真価は、0対10の大敗を喫した次の戦いに問われる



歴史を学ばないということは、その世界や組織の衰退につながるとさえおもう

どんなせかいでも、その中で仕事をするのなら、その世界や組織の成り立ちから謙虚に学び、先輩たちが残した財産を継承していく姿勢が大切なのではないか
歴史を学べば、それを築いてきた先輩たちが何を考え、どんな業績を残したのかもわかる
成功例だけではなく、失敗例もいくつもあるはずだから、歴史を学ぶことは、同じような失敗を繰り返さないことにも繋がるはずだ

企業の社風も時代と共に移り変わっていくようだが、創業者の理念が受け継がれなくなったら、その企業では衰退が始まるという
プロ野球界に関する人間も、しっかりと歴史を学び、そこから未来の発展に繋がるような世界にしていかなければいけないだろう


実力第一、成果主義、好き嫌いで人は使わないとはいえ、チャンスをつけめるかどうかには運やタイミングもある
これも事実だ

人間味あふれる人と評判の監督が率いるチームでも、「このチームにいてよかった」と心底感じているのは、レギュラークラス、すなわち監督に重宝されている選手だけだ

組織の中には、いい思いをしている人とそうでない人が必ず混在している
ならば、職場に「居心地のよさ」など求めず、コツコツと自分の仕事に打ち込んでチャンスをつかむことに注力したほうがいい


私のやり方が正しいのかどうかはわからない
だが、監督が一つの方向性を明確に示さなければ、チームは動きようがない

選手の指導にあたっては、次の2つを徹底してきた
一つは、絶対に押しつけてはならない
もう一つは、鉄拳指導の禁止である


アドバイスが、「俺はこうやってきた。だからお前もこうやればいい」という内容だと、私は暗い気持ちになる
技術、仕事の進め方には「絶対的な基本」がある
しかし「絶対的な方法論」はない

有望な新人が自分と似たタイプだと思い込んだコーチや先輩は、早く一人前になってほしいという親心で、方法論の部分にまで言及してしまう



リーダーにとって大切なのは、仕事を引き継いでいくことよりも自分自身の方法論を部下に示すことではないだろうか
企業であれば、理念や慣習といったものは、「引き継ぐ」というよりも「受け継がれ」ていく
そして、リーダーが交代するタイミングというのは、組織の若返りを図ろうとしていたり、新しい風を吹き込もうとしている場合が多い
その際にリーダーが明らかにすべきなのは、自分がリーダーになった組織は何を目指し、そこまでどういうプロセスで到達しようと考えているか、ということなのだ

2004年の私の場合を例にすれば、新監督として示したのは次の通りである

「ドラゴンズの目標は日本一になることであり、そのためには個々の10〜15%実力をアップさせてほしい」

次に誰が監督になっても優勝を目指して戦えるチーム、欲を言えば常に優勝を争えるチームに成熟させておく
後任に引き継ぎはしないが、次の監督が困らないチームにしておくこと
それが監督としてやらなければならない仕事なのだと理解してきた

20130903日経ビジネス

■20130903日経ビジネス

■細谷英二りそなホールディングス
社員には「最初の100日間でバランスシートの改革を実行する」と宣言し、再生の基本方針として「厳格に」「嘘をつかない」「先送りしない」という方針を掲げました

私は最初の100日が組織の1000日後を決めるとの思いを強めました


■山本梁介 スーパーホテル会長
同じことをしているのに、成功している人もいれば、失敗する人もいる
成功する人というのは感性が豊かで、人間力にも溢れている
それを見て、事業に成功するだけでなく、人間的にも成功する人を目指さなければいけないと気づきました
自分自身の感性を磨き、人間力を高めるにはどうすればいいか
まず大切なのは自分で考え、自分で行動すること
それによって周囲の人に感動を与え、自分もまた感謝し、感激する

社員にとっては、給料や休暇の多さ以上に、自分の成長を実感できることが一番の喜びであり、幸せです
それを実現することで組織も幸せになり、ひいてはお客様に感動を与えられるようになります
ですから顧客満足の前に、従業員満足が大事なのです

最も重視しているのは、上司と部下との対話です
新入社員を例に挙げるとわまずその人の長所を明らかにする
上司はそれを伝え、大いに伸ばしていくことで部下の自信につなげるのです


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