■部下を持ったら必ず読む 「任せ方」の教科書 「プレーイング・マネージャー」になってはいけない1 出口 治明
「多様な人材に任せることでしか、会社は成長しない」
高い地位についた人間が、部下の意見を受け入れない「裸の王様」になれば、組織の中は同質化します
そして同質化した組織は、やがて時代の変化に取り残されてしまうでしょう
何事かを成し遂げようと思っても、一人ではなにもできません
ビジネスを成長させるためには、他人の力を借りなければならない
人の力も、時間も有限で、すべてを持ち合わせている人はいません
だからこそ、任せる
だからこそ、補い合えるチームづくりが必要です
「どんな部下も信頼して任せる」ことこそ、リーダーの要諦
「マネジメント」とは、突き詰めると「人を使う」ことです
いま、どの方向に風が吹いているか、社会がどの方向に変化しているかを見極め、変化に適した人材に「任せる」ことがマネジメントの本質です
「グローバル企業」はCEO(意思決定に責任を持つ)とCOO(業務執行に責任を持つ)をきちんとわけるのが定石
「みんなで決めよう」とすると、決定のスピードが損なわれます
稟議書にハンコの数が増えるほど、「だれの責任で決めたのか」があいまいになってしまうでしょう
したがって、「決定権を持つ者が、一人で決めるべきです」
取締役会での決定を「執行する役割」はCOOにあります
とはいえ、すべての業務をCOOが一人で担うのは現実的ではありません
職責が下位の社員に権限の一部を移譲し、業務を分担する仕組みが必要です
権限の移譲は金額で考えるとわかりやすいと思います
企業は責任の所在を明らかにするためにも、また、意思決定のスピードを早くするためにも「権限の範囲」を社員に周知すべきです
「だれが、なにを、どこまで決定できるのか」
「自分が負う責任はどこまでなのか」
事案の内容によっては、「決定権者が一人で決めると、都合が悪いこと」もあるでしょう
「まわりの意見を参考にした上で、決定をしたほうがいい」場合があります
協議とは、みんなで話し合うことです
ただし、「みんなで話し合いをする」だけであって「みんなで決める」ことではありません
まわりの意見はあくまでも参考です
最終的になにを選ぶのかは、「決定権者が一人で決定する」のが正しい協議のあり方です
事案の重要性や金額の大きさによっては、決定権者以外の者に「同意権」を与えておく方法があります
例えば、「他部門にわたる事業の予算に関しては、経理部長の同意が必要」というルールを作っておく
すると、決定権を持つ長でも、「経理部長の同意を得られなければ、仕事を進めることはできない」ことになるのです
権限を与え、仕事を任せた後の大事なルールがあります
それは、ひとたび権限を移譲したら、その権限は「部下の固有のもの」であり、上司と言えども口を挟むことはできないというものです
「社員としての優秀さと、経営者としての優秀さは違う」ことを知り、「マネージメントはマネージャー(経営者)」に「実際のプレー(業務)はプレーヤー」に任せる仕組みを構築する必要があります
私は自分の頭で考えることが競争力の原点だと考えています
その点で織田信長は、稀有な才能を有していたと思います
強い競争力と経営者視点を持った戦国武将です
なにもしなくてもよかった高度成長期であれば、流れに乗っているだけなので、家康型が適していました
ところがこれからの日本のように、ゼロ成長、マイナス成長の世界では、自分で考える「信長型のリーダー」が求められています
経営者を外部から招くのではなく、自社の中から選出したいのであれば、「社員として優秀な人材が、経営者としても力を発揮できるかどうか」を見極めなければいけません
つまり、優秀な社員に関連会社の社長をやらせてみて、実績を上げることができたら、本社の取締役として呼び戻せばいいのです
同質性にこだわると、会社が硬直化します
女性に売るなら女性に、外国人に売るなら外国人に、若者に売るなら若者に任せる
性別や年齢、国籍を超え、多様な人材に「任せる」ことで、会社は強くなります
ボードメンバーにしても社員にしても、ダイバーシティを徹底し、多様な人材で組織を構成する
これからの企業には、「異質な社員に権限を移譲し、任せる」ことが求められているのです
グローバリゼーションとは、一言で言えば、「ゲームのルールが変わった」ことを意味します
つまり、新しいルールを覚えて、新しい人材に仕事を任せて、これまでと違った戦い方をしなければ、勝てなくなってしまうのです
■丸投げ
指示があいまい
「なんでもいいから、適当にやっておいてくれ」
■任せる
指示が明確。権限の範囲が明確
「君にはこういう権限を与えるので、こういう結果を出して欲しい」
「任せる」とは「権限の範囲を明確にした上で、的確な指示を与えること」です
大きな仕事を任されると、責任も重くなる
否応なく、階段を上がることになる
その結果、「自動的に視野が広くなる」のです
上司がすべき労務管理とは、
「部下に権限を与えた上で、的確な指示を出すこと」です
極端な話、営業部の上司が部下に対して、「東京都内ならどこでもいいから、適当に行って適当に売ってこい」と指示したところで部下は困惑するでしょう
指示が適当だからです
上司は「部下が困らないように、具体的かつ明確な指示を出す」必要があります
「23区を10のエリアに分けた。誰がどのエリアを担当するかはくじ引きで決める」
「売り方は各自に任せるので、担当エリアごとに月100万円の売り上げを上げること」
「扱う商品は、これ」
「報告は一ヶ月後でいい」
と指示を与えておけば、
「どこにいって、なにを、いつまでに、どれだけ売ればいいのか」が明確になるので、部下は動きやすくなります
中間層の社員は、「上司から受けた指示を、さらに部下に伝えるポジション」にいます
私は、「上司こそ部下に対して「ほうれんそう」をする」ことをお勧めしています
そもそも部下にとって上司はうっとうしい存在です
うっとうしい上司に向かって、自発的に「ほうれんそう」をしたい部下がたくさんいるとは思えません
そんな上司にすり寄ってくる人間は、ゴマスリに違いありません
そのことに気がつかず、「あいつはなかなかかわいいやつや。よしよし、言うことを聞いてやろう」と考えた途端、正しい判断ができなくなります
部下とのコミュニケーションを円滑にしたいなら「向こうから来るのを待つ」のではなく、こちらから現場に出向いて行きましょう
上司が部下に指示を出すときは、次の四つを明確に示すべきです
期限を示す
優先順位を示す
目的•背景を示す
レベルを示す
優先順位は、「時間の順位」の他に「価値の順位」も含まれる
価値とは与えた仕事の中でなにをもっとも優先するかです
使いやすさ
わかりやすさ
SEO
「このプロジェクトではAとBとCを大切にしている。もっとも優先すべきなのは、A。二番目はB。三番目はC。判断に迷ったらAを優先するように」
このように順位をつけて伝えておけば、担当者は困りません
たとえば、上司Aがプレゼン資料を作成中だとします
上司Aは部下Bを読んで「この部分が足りないから、探してくるように」と指示を出しました
このとき上司Aは、「どんなデータが足りないのか」「どんなデータを見つけて欲しいのか」といった部分的な説明とともに、プレゼンテーションに関する全体像(背景と目的)を部下に説明する必要があります
プレゼンの目的はなにか
どういう資料をつくろうとしているのか
どこに提出する資料なのか
仕事を任せるときは、
「時間も部下の能力も有限である」ことを忘れてはいません
権限と責任は、表と裏の関係です
権限を定めれば、それに応じて責任の範囲も定まります
大きな権限を与えておきながら、責任を求めないとしたら、権限が乱用されてしまう
反対に、責任ばかり押し付けて権限を与えなければ、部下のやる気は下がる一方でしょう
部下に仕事を任せるときは、「権限と責任を一致させる」ことを忘れてはいけません
私は、「部下を育てる基本は、責任を持たせること」だと考えています
私から見て、部下の仕事の出来栄えが50点だったとします
このとき、「私が直接手をいれて、手直しをする」ほうが早いかもしれません
でも、それでは部下の能力は上がらないでしょう
部下の成長を望むなら、目一杯考えさせること
時間が許す限り何度も手直しさせるべきです
部下のほうが仕事の範囲が狭いからこそ深い
自分で考えもせずに「答えを聞きに来た部下」は相手にしません
事前に案を考えてきた部下にだけ相談にのっていました
「仕事を任せる」ときは、「与えた権限の中で部下に目一杯考えさせること」が必要です
安易に相談にのったり、すぐに答えを教えたり、すぐに上司が手直しするようでは、部下を育てることはできません
(もちろん時間は有限なので、タイムリミットを設けておく必要があります)
上司は「部下に仕事を任せる権限」を持っているのですから、部下が結果を出せなければ、最終的には「上司の責任」です
部下の責任は上司の責任になるのです
ビジネスの世界は「結果責任」です
理由がどうあれ、結果が伴わなければ責任を取らなければいけません
ところが、日本の社会では「結果責任」の概念が薄い気がします
「結果は出なかったが、善意でやったことだから、許そう」
「一生懸命頑張ったのだから、努力だけは認めてあげよう」
と考え、失敗をした社員にさえ、一定の評価を与えようとします
ですが、こうした風土が組織を弱くするのです
「知っていようが、知っていまいが、自部門の責任を取る」のが上司です
「上司はいかなる理由があろうとも、責任を取る」
「部下には、与えた権限の範囲内で責任を取らせるが、それ以上の責任は上司が取る」
上司が出処進退(役職にとどまることと、辞すること)をキレイにすると部下は上司を信頼するでしょう
し、「自分が失敗すると、上司に責任をかぶせてしまうことになる。そうならないように、結果を出そう」と、気を引き締めるはずです
一方で上司も「部下の責任は最終的に自分(上司)にある」という秩序の感覚を持っていれば、部下を把握しようとするはずです
「故意や過失があろうとなかろうと責任を取る」のが上司であり、「責任を取れる上司」がいるからこそ、組織は強くなるのです
もし、「さぼっている部下」がいたら、それは「さぼっている部下」が悪いのではなく、上司が悪い
「仕事を与えていない(仕事を任せていない)からです」
「俺は信頼されているから、仕事を与えられているんだ」
「上司が認めてくれているから、任されるんだ」
と意気に感じるはずです
マネージャーは60点で我慢する度量を持つべきです
「俺だったら80点なのに」と嘆きたい気持ちをぐっとこらえ、残りの40点は「見て見ぬ振り」をするのです
マネージャーの仕事は自らもプレーヤーとして現場に出て、「80点を取る」ことではありません
部下が10人いるのなら、まず10人全員が「毎回60点取れる」ようにするのがマネージャーの役割です
日本の企業ではプレーヤーとして優秀だった人材(80点以上取れる人材)がマネージャーに昇格するのが一般的です
するとマネージャーは部下の仕事にも80点以上を求めます
ですが、60点の部下全員を瞬時に80点に引き上げることは不可能です
まずは60点未満の不合格をなくす
そして全員が60点取れるようになったら、今度は「65点以上を目指す」のが正しい成長のあり方です
他人に任せられない人には3つの特徴がある
1.「人間の能力や使える時間が有限である」ことをわかっていない
2.部下の仕事が60点では納得できない
3.判断のスピードが遅い
60点で満足していたら組織の向上は望めません
まず全員の60点を確認したら、次は5点、10点と上げていくことが重要なのは言うまでもありません
仕事ができる上司は「玉離れ」がいい
ボール(仕事)が自分の部署にきたら、「この仕事はだれに任せようか」「あいつなら得意そうだ」とすぐに判断して、仕事を任せることができます
部下を動かす3つの方法
1.上司を好きにさせる
2.圧倒的な能力の違いを見せる
3.一生懸命働いている姿を見せる
「忙しくしているフリ」ではダメです
口ではいい事を言っても、行動が伴っていなければ、部下に見透かされます
その人に向いている仕事を任せたほうが成果は望めます
「人には向き不向きがある」
「部下の得意なところを任せる」
部下の短所は「ほうっておく」
部下の「尖った部分」は、「削るのではなく、そのまま残す」こと
人は「小さい円より大きい三角形」であるべきです
単純な事務作業を、ミスなくスピーディに行うのは大変な能力です
ルーチンワークにも重要な責任がかかっています
したがってルーチンワークをする人も会社にとっては欠くことができない存在です
人には「得意•不得意がある」ことがわかっていない上司は、「苦手なものも、がんばって努力を続ければ、必ず克服できる」と考えがちです
ですが、私はこの考え方は反対です
極論すれば、苦手は克服しない
苦手なものは誰かに補ってもらう
だれかに教えてもらう
だれかに手伝ってもらう
チームはそのためにあるのです
「人間って普段30〜40ぐらいで働いているのだから、50で働けば十分や」
人に仕事を任せるとき、上司は次の2つを見極めなければいけません
1.部下の適性(向き不向き、得意不得意)
2.周囲の状況(いまがどのような局面なのか)
適材適所は口で言うほど優しいものではありません
なぜなら上司が
部下の適性
周囲の状況
を察する能力(=洞察力)を持っていないと実現できないからです
「上手に任せられる人」になりたいのなら「人間と社会に対する洞察力を高める」ことが重要です
「社会はどのように成り立っているのか」
「自分が置かれた立場はどうなっているのか」
「状況を打開するために、自分にできることはなにか」
「だれになにをどのような任せ方をするのが最良なのか」
会社の状況、社会の流れと変化、部下の適性などを読んで、
「最適な人材を最適な場所に最適なタイミングで配置」しなければならない
インプットの量を増やすには、
「人から学ぶ」
「本から学ぶ」
「旅から学ぶ」
この3つ以外にありません
私自身を振り返ってみると、この3つの中では「本」から得たインプットが最も多いと思います
好んで読むのは、古典です
方法序説
アメリカのデモクラシー
想像の共同体
韓非子
二コマコス倫理学
などの古典作品は長い歴史の中で残ってきたものであって、市場の洗礼を十分に受けています
その意味では、「1冊の古典は10冊のビジネス書に勝る」かもしれません
山本五十六が残した名言、
「やってみせ、いってきかせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、ひとは育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
にあるように、相手を信頼し、任せるからこそ人は育ちます
合理的な根拠のない精神論では、決して人は育たないのです
「多様な人材に任せることでしか、会社は成長しない」
高い地位についた人間が、部下の意見を受け入れない「裸の王様」になれば、組織の中は同質化します
そして同質化した組織は、やがて時代の変化に取り残されてしまうでしょう
何事かを成し遂げようと思っても、一人ではなにもできません
ビジネスを成長させるためには、他人の力を借りなければならない
人の力も、時間も有限で、すべてを持ち合わせている人はいません
だからこそ、任せる
だからこそ、補い合えるチームづくりが必要です
「どんな部下も信頼して任せる」ことこそ、リーダーの要諦
「マネジメント」とは、突き詰めると「人を使う」ことです
いま、どの方向に風が吹いているか、社会がどの方向に変化しているかを見極め、変化に適した人材に「任せる」ことがマネジメントの本質です
「グローバル企業」はCEO(意思決定に責任を持つ)とCOO(業務執行に責任を持つ)をきちんとわけるのが定石
「みんなで決めよう」とすると、決定のスピードが損なわれます
稟議書にハンコの数が増えるほど、「だれの責任で決めたのか」があいまいになってしまうでしょう
したがって、「決定権を持つ者が、一人で決めるべきです」
取締役会での決定を「執行する役割」はCOOにあります
とはいえ、すべての業務をCOOが一人で担うのは現実的ではありません
職責が下位の社員に権限の一部を移譲し、業務を分担する仕組みが必要です
権限の移譲は金額で考えるとわかりやすいと思います
企業は責任の所在を明らかにするためにも、また、意思決定のスピードを早くするためにも「権限の範囲」を社員に周知すべきです
「だれが、なにを、どこまで決定できるのか」
「自分が負う責任はどこまでなのか」
事案の内容によっては、「決定権者が一人で決めると、都合が悪いこと」もあるでしょう
「まわりの意見を参考にした上で、決定をしたほうがいい」場合があります
協議とは、みんなで話し合うことです
ただし、「みんなで話し合いをする」だけであって「みんなで決める」ことではありません
まわりの意見はあくまでも参考です
最終的になにを選ぶのかは、「決定権者が一人で決定する」のが正しい協議のあり方です
事案の重要性や金額の大きさによっては、決定権者以外の者に「同意権」を与えておく方法があります
例えば、「他部門にわたる事業の予算に関しては、経理部長の同意が必要」というルールを作っておく
すると、決定権を持つ長でも、「経理部長の同意を得られなければ、仕事を進めることはできない」ことになるのです
権限を与え、仕事を任せた後の大事なルールがあります
それは、ひとたび権限を移譲したら、その権限は「部下の固有のもの」であり、上司と言えども口を挟むことはできないというものです
「社員としての優秀さと、経営者としての優秀さは違う」ことを知り、「マネージメントはマネージャー(経営者)」に「実際のプレー(業務)はプレーヤー」に任せる仕組みを構築する必要があります
私は自分の頭で考えることが競争力の原点だと考えています
その点で織田信長は、稀有な才能を有していたと思います
強い競争力と経営者視点を持った戦国武将です
なにもしなくてもよかった高度成長期であれば、流れに乗っているだけなので、家康型が適していました
ところがこれからの日本のように、ゼロ成長、マイナス成長の世界では、自分で考える「信長型のリーダー」が求められています
経営者を外部から招くのではなく、自社の中から選出したいのであれば、「社員として優秀な人材が、経営者としても力を発揮できるかどうか」を見極めなければいけません
つまり、優秀な社員に関連会社の社長をやらせてみて、実績を上げることができたら、本社の取締役として呼び戻せばいいのです
同質性にこだわると、会社が硬直化します
女性に売るなら女性に、外国人に売るなら外国人に、若者に売るなら若者に任せる
性別や年齢、国籍を超え、多様な人材に「任せる」ことで、会社は強くなります
ボードメンバーにしても社員にしても、ダイバーシティを徹底し、多様な人材で組織を構成する
これからの企業には、「異質な社員に権限を移譲し、任せる」ことが求められているのです
グローバリゼーションとは、一言で言えば、「ゲームのルールが変わった」ことを意味します
つまり、新しいルールを覚えて、新しい人材に仕事を任せて、これまでと違った戦い方をしなければ、勝てなくなってしまうのです
■丸投げ
指示があいまい
「なんでもいいから、適当にやっておいてくれ」
■任せる
指示が明確。権限の範囲が明確
「君にはこういう権限を与えるので、こういう結果を出して欲しい」
「任せる」とは「権限の範囲を明確にした上で、的確な指示を与えること」です
大きな仕事を任されると、責任も重くなる
否応なく、階段を上がることになる
その結果、「自動的に視野が広くなる」のです
上司がすべき労務管理とは、
「部下に権限を与えた上で、的確な指示を出すこと」です
極端な話、営業部の上司が部下に対して、「東京都内ならどこでもいいから、適当に行って適当に売ってこい」と指示したところで部下は困惑するでしょう
指示が適当だからです
上司は「部下が困らないように、具体的かつ明確な指示を出す」必要があります
「23区を10のエリアに分けた。誰がどのエリアを担当するかはくじ引きで決める」
「売り方は各自に任せるので、担当エリアごとに月100万円の売り上げを上げること」
「扱う商品は、これ」
「報告は一ヶ月後でいい」
と指示を与えておけば、
「どこにいって、なにを、いつまでに、どれだけ売ればいいのか」が明確になるので、部下は動きやすくなります
中間層の社員は、「上司から受けた指示を、さらに部下に伝えるポジション」にいます
私は、「上司こそ部下に対して「ほうれんそう」をする」ことをお勧めしています
そもそも部下にとって上司はうっとうしい存在です
うっとうしい上司に向かって、自発的に「ほうれんそう」をしたい部下がたくさんいるとは思えません
そんな上司にすり寄ってくる人間は、ゴマスリに違いありません
そのことに気がつかず、「あいつはなかなかかわいいやつや。よしよし、言うことを聞いてやろう」と考えた途端、正しい判断ができなくなります
部下とのコミュニケーションを円滑にしたいなら「向こうから来るのを待つ」のではなく、こちらから現場に出向いて行きましょう
上司が部下に指示を出すときは、次の四つを明確に示すべきです
期限を示す
優先順位を示す
目的•背景を示す
レベルを示す
優先順位は、「時間の順位」の他に「価値の順位」も含まれる
価値とは与えた仕事の中でなにをもっとも優先するかです
使いやすさ
わかりやすさ
SEO
「このプロジェクトではAとBとCを大切にしている。もっとも優先すべきなのは、A。二番目はB。三番目はC。判断に迷ったらAを優先するように」
このように順位をつけて伝えておけば、担当者は困りません
たとえば、上司Aがプレゼン資料を作成中だとします
上司Aは部下Bを読んで「この部分が足りないから、探してくるように」と指示を出しました
このとき上司Aは、「どんなデータが足りないのか」「どんなデータを見つけて欲しいのか」といった部分的な説明とともに、プレゼンテーションに関する全体像(背景と目的)を部下に説明する必要があります
プレゼンの目的はなにか
どういう資料をつくろうとしているのか
どこに提出する資料なのか
仕事を任せるときは、
「時間も部下の能力も有限である」ことを忘れてはいません
権限と責任は、表と裏の関係です
権限を定めれば、それに応じて責任の範囲も定まります
大きな権限を与えておきながら、責任を求めないとしたら、権限が乱用されてしまう
反対に、責任ばかり押し付けて権限を与えなければ、部下のやる気は下がる一方でしょう
部下に仕事を任せるときは、「権限と責任を一致させる」ことを忘れてはいけません
私は、「部下を育てる基本は、責任を持たせること」だと考えています
私から見て、部下の仕事の出来栄えが50点だったとします
このとき、「私が直接手をいれて、手直しをする」ほうが早いかもしれません
でも、それでは部下の能力は上がらないでしょう
部下の成長を望むなら、目一杯考えさせること
時間が許す限り何度も手直しさせるべきです
部下のほうが仕事の範囲が狭いからこそ深い
自分で考えもせずに「答えを聞きに来た部下」は相手にしません
事前に案を考えてきた部下にだけ相談にのっていました
「仕事を任せる」ときは、「与えた権限の中で部下に目一杯考えさせること」が必要です
安易に相談にのったり、すぐに答えを教えたり、すぐに上司が手直しするようでは、部下を育てることはできません
(もちろん時間は有限なので、タイムリミットを設けておく必要があります)
上司は「部下に仕事を任せる権限」を持っているのですから、部下が結果を出せなければ、最終的には「上司の責任」です
部下の責任は上司の責任になるのです
ビジネスの世界は「結果責任」です
理由がどうあれ、結果が伴わなければ責任を取らなければいけません
ところが、日本の社会では「結果責任」の概念が薄い気がします
「結果は出なかったが、善意でやったことだから、許そう」
「一生懸命頑張ったのだから、努力だけは認めてあげよう」
と考え、失敗をした社員にさえ、一定の評価を与えようとします
ですが、こうした風土が組織を弱くするのです
「知っていようが、知っていまいが、自部門の責任を取る」のが上司です
「上司はいかなる理由があろうとも、責任を取る」
「部下には、与えた権限の範囲内で責任を取らせるが、それ以上の責任は上司が取る」
上司が出処進退(役職にとどまることと、辞すること)をキレイにすると部下は上司を信頼するでしょう
し、「自分が失敗すると、上司に責任をかぶせてしまうことになる。そうならないように、結果を出そう」と、気を引き締めるはずです
一方で上司も「部下の責任は最終的に自分(上司)にある」という秩序の感覚を持っていれば、部下を把握しようとするはずです
「故意や過失があろうとなかろうと責任を取る」のが上司であり、「責任を取れる上司」がいるからこそ、組織は強くなるのです
もし、「さぼっている部下」がいたら、それは「さぼっている部下」が悪いのではなく、上司が悪い
「仕事を与えていない(仕事を任せていない)からです」
「俺は信頼されているから、仕事を与えられているんだ」
「上司が認めてくれているから、任されるんだ」
と意気に感じるはずです
マネージャーは60点で我慢する度量を持つべきです
「俺だったら80点なのに」と嘆きたい気持ちをぐっとこらえ、残りの40点は「見て見ぬ振り」をするのです
マネージャーの仕事は自らもプレーヤーとして現場に出て、「80点を取る」ことではありません
部下が10人いるのなら、まず10人全員が「毎回60点取れる」ようにするのがマネージャーの役割です
日本の企業ではプレーヤーとして優秀だった人材(80点以上取れる人材)がマネージャーに昇格するのが一般的です
するとマネージャーは部下の仕事にも80点以上を求めます
ですが、60点の部下全員を瞬時に80点に引き上げることは不可能です
まずは60点未満の不合格をなくす
そして全員が60点取れるようになったら、今度は「65点以上を目指す」のが正しい成長のあり方です
他人に任せられない人には3つの特徴がある
1.「人間の能力や使える時間が有限である」ことをわかっていない
2.部下の仕事が60点では納得できない
3.判断のスピードが遅い
60点で満足していたら組織の向上は望めません
まず全員の60点を確認したら、次は5点、10点と上げていくことが重要なのは言うまでもありません
仕事ができる上司は「玉離れ」がいい
ボール(仕事)が自分の部署にきたら、「この仕事はだれに任せようか」「あいつなら得意そうだ」とすぐに判断して、仕事を任せることができます
部下を動かす3つの方法
1.上司を好きにさせる
2.圧倒的な能力の違いを見せる
3.一生懸命働いている姿を見せる
「忙しくしているフリ」ではダメです
口ではいい事を言っても、行動が伴っていなければ、部下に見透かされます
その人に向いている仕事を任せたほうが成果は望めます
「人には向き不向きがある」
「部下の得意なところを任せる」
部下の短所は「ほうっておく」
部下の「尖った部分」は、「削るのではなく、そのまま残す」こと
人は「小さい円より大きい三角形」であるべきです
単純な事務作業を、ミスなくスピーディに行うのは大変な能力です
ルーチンワークにも重要な責任がかかっています
したがってルーチンワークをする人も会社にとっては欠くことができない存在です
人には「得意•不得意がある」ことがわかっていない上司は、「苦手なものも、がんばって努力を続ければ、必ず克服できる」と考えがちです
ですが、私はこの考え方は反対です
極論すれば、苦手は克服しない
苦手なものは誰かに補ってもらう
だれかに教えてもらう
だれかに手伝ってもらう
チームはそのためにあるのです
「人間って普段30〜40ぐらいで働いているのだから、50で働けば十分や」
人に仕事を任せるとき、上司は次の2つを見極めなければいけません
1.部下の適性(向き不向き、得意不得意)
2.周囲の状況(いまがどのような局面なのか)
適材適所は口で言うほど優しいものではありません
なぜなら上司が
部下の適性
周囲の状況
を察する能力(=洞察力)を持っていないと実現できないからです
「上手に任せられる人」になりたいのなら「人間と社会に対する洞察力を高める」ことが重要です
「社会はどのように成り立っているのか」
「自分が置かれた立場はどうなっているのか」
「状況を打開するために、自分にできることはなにか」
「だれになにをどのような任せ方をするのが最良なのか」
会社の状況、社会の流れと変化、部下の適性などを読んで、
「最適な人材を最適な場所に最適なタイミングで配置」しなければならない
インプットの量を増やすには、
「人から学ぶ」
「本から学ぶ」
「旅から学ぶ」
この3つ以外にありません
私自身を振り返ってみると、この3つの中では「本」から得たインプットが最も多いと思います
好んで読むのは、古典です
方法序説
アメリカのデモクラシー
想像の共同体
韓非子
二コマコス倫理学
などの古典作品は長い歴史の中で残ってきたものであって、市場の洗礼を十分に受けています
その意味では、「1冊の古典は10冊のビジネス書に勝る」かもしれません
山本五十六が残した名言、
「やってみせ、いってきかせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、ひとは育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
にあるように、相手を信頼し、任せるからこそ人は育ちます
合理的な根拠のない精神論では、決して人は育たないのです