ここでは実際にどういった形で不況に入るのかが具体的にのべられてます

●アメリカ
景気後退は2001年のアメリカ民間投資の落ち込みを持って始まった

ところが投資が低落し、失業率が上昇したにも関わらず、アメリカの消費は2001年も2002年も力強いままだった
これは金利が急速に低められ、40年ぶりの低水準になったおかげでアメリカの家計が借金を積み増し、消費に精を出すことができたためである

地獄の上に宙ぶらりんになったアメリカ経済が消費という命綱にぶら下がっていると考えればわかりやすい

したがって、やがてアメリカに訪れるであろう不況の大二局面は個人消費の急減という形をとることになる

消費が低下しだすと、それを追って投資が削減されることになる
消費と投資が揃って減れば、アメリカの輸入は急減するしかない

そしてそうなると、世界全体が景気後退に見舞われる

好況に沸くアメリカの輸入が世界全体の経済拡張を引っ張っていた1990年代のちょうど裏返しである

この世界不況は、アメリカの経常収支赤字の不可避な修正、つまりドルの暴落によって、さらなる悪化を強いられる

赤字の修正が消費の落ち込みと同時に起きるのであれば、世界経済は1930年代の大恐慌以来、最悪の不況に見舞われるだろう
一方、赤字の修正がアメリカの景気後退が終わったあとになるのであれば、世界不況はひどく長期的なものとなってしまう


●ニューエコノミー不況
不況の第一局面は、
株価下落、失業率の上昇がすぐさま政府財政の悪化に反映された
2001年にはほとんどの国の財政が悪化した
2002年にはさらに悪化することが予想される

不況の第二局面は、
アメリカにおける消費の急落と、それに引きずられる形でのアメリカの国内投資の再度の低下
他方では、ドルの暴落と、それに続くアメリカの純輸入・経常収支赤字の劇的な縮小が、どういった順序かはさておき組み合わさって訪れることになる


●プラザ合意
アメリカの経常収支赤字が風船のように膨れ上がっていくことに対する懸念が高まった結果が1985年のプラザ合意である

よりバランスのとれた貿易をもたらすべく、主要国が為替相場に強調して介入し、過大評価されていたドルの価値は引き下げられた



●ドル暴落
一つはっきりしないのは、これが中央銀行の総裁わ政府首脳の間の合意としてそうなるのか、パニックやドルの投げ売りという形で市場が勝手に調整してしまうのかである

1980年代後半における円の上昇は、日本の台頭の歯止めとなった
今回のアメリカの貿易赤字政策の崩壊は、今度は中国やアジア諸国の台頭のブレーキとなるかもしれない


●中国
1980年から2000年までの間に平均して年に22%という勢いで銀行融資を伸ばしてきた
これこそが、輸出とならぶ中国の高度成長の原動力だった

そして、その結果が、今やGDPの133%にまで膨れ上がった銀行融資残高である
だが、「ほとんど返済不要の銀行融資」というだけに、GDPの50%近い5000億ドルが不良債権となり、返済されない見込み

損失を出し続ける国営企業が倒産し、何千万という失業者を出さないようにするために年率10%を超える融資の伸びがどうしても必要である

そして銀行は国策に従う形で積極融資を続けるだろう

GDPの50%にものぼる中国の不良債権は今後も増える一方だと思われる